ポテチの水彩絵の世界にようこそ!
気分でコメントや画像とか、恐いのや面白い毒ある話とか、
現実の花の色と違ったりとか、妙な感じです。
私の故郷に伝わっていた "禁后" というものにまつわる話です。
どう読むのかは最後までわかりませんでしたが、
私たちの間では "パンドラ" と呼ばれていました。
こんな触りから始まるお話。
「怖い話投稿/ホラーテラー」というサイトの投稿文で
WEBで有名な怖い話「おじゃま道草」級の気味の悪い話を見つけてしまい、
思わずコピペしてしまいました。
「パンドラ」というタイトルです。
もし良かったら読んでみてはいかがでしょうか。
(「つづきはこちら」をクリックすると読めます。長文ですよ、フフ....)
私が生まれ育った町は静かでのどかな田舎町でした。
目立った遊び場などもない寂れた町だったのですが、
1つだけとても目を引くものがありました。
町の外れ、たんぼが延々と続く道にぽつんと建っている一軒の空き家です。
長らく誰も住んでいなかった様でかなりボロく、
古くさい田舎町の中でも一際古さを感じさせるような家でした。
それだけなら単なる古い空き家…で終わりなのですが、
目を引く理由がありました。
1つは両親など町の大人たちの過剰な反応。
その空き家の話をしようとするだけで厳しく叱られ、
時にはひっぱたかれてまで怒られることもあったぐらいです。
どの家の子供も同じで、私もそうでした。
もう1つは、その空き家にはなぜか玄関が無かったということ。
窓やガラス戸はあったのですが、出入口となる玄関が無かったのです。
以前に誰かが住んでいたとしたら、どうやって出入りしていたのか?
わざわざ窓やガラス戸から出入りしてたのか?
そういった謎めいた要素が興味をそそり、
いつからか勝手に付けられた "パンドラ" という呼び名も相まって、
当時の子供たちの1番の話題になっていました。
(この時点では "禁后" というものについてまだ何も知りません)
私を含め、大半の子は何があるのか調べてやる!と
探索を試みようとしていましたが、
普段その話をしただけでも親たちがあんなに怒るというのが身に染みていたため、
なかなか実践できずにいました。
場所自体は子供だけでも難なく行けるし、人目もありません。
たぶん、みんな1度は空き家の目の前まで来てみたことがあったと思います。
しばらくはそれで雰囲気を楽しみ、何事もなく過ごしていました。
私が中学にあがってから何ヵ月か経った頃、
ある男子が "パンドラ" の話に興味を持ち、ぜひ見てみたいと言いだしました。
名前はAとします。
A君の家はお母さんがもともとこの町の出身で他県に嫁いでいったそうですが、
離婚を機に実家であるお祖母ちゃんの家に戻ってきたとのこと。
A君自身はこの町は初めてなので、その話も全く知らなかった様です。
その当時私と仲の良かったB君・C君・D子の内、
B君とC君が彼と親しかったので、自然と私たちの仲間内に加わっていました。
5人で集まってたわいのない会話をしている時、
私たちが当たり前の様にパンドラという言葉を口にするので、
気になったA君がそれに食い付いたのでした。
「うちの母ちゃんとばあちゃんもここの生まれだけど、
その話聞いたらオレも怒られんのかな?」
「怒られるなんてもんじゃねえぜ〜
うちの父ちゃん母ちゃんなんか本気で殴ってくるんだぞ!」
「うちも。意味わかんないよね」
A君に "パンドラ" の説明をしながら、
みんながそれぞれの親への文句を言い始めます。
ひととおり説明し終えると、1番の疑問である "空き家に何があるのか"
という話題になりました。
「そこに何があるかってのは誰も知らないの?」
「知らない。入ったことないし聞いたら怒られるし。
知ってんのは親たちだけなんじゃないか?」
「だったらさ、何を隠してるのかオレたちで突き止めてやろうぜ!」
A君は意気揚揚と言いました。
親に怒られるのが嫌だった私と他の3人は最初こそ渋っていましたが、
A君のノリにつられたのと、
今までそうしたくともできなかったうっぷんを晴らせるということで、
結局みんな同意します。
その後の話し合いで、いつも遊ぶ時によくついてくる
D子の妹・クルミちゃんも行きたいということになり、
6人で日曜の昼間に作戦決行となりました。
当日、わくわくした面持ちで空き家の前に集合、
なぜか各自リュックサックを背負ってスナック菓子などを持ち寄り、
みんな浮かれまくっていたのを覚えています。
前述のとおり、問題の空き家はたんぼに囲まれた場所にぽつんと建っていて、
玄関がありません。
2階建の家ですが窓まで昇れそうになかったので、
中に入るには1階のガラス戸を割って入るしかありませんでした。
「ガラスの弁償ぐらいなら大したことないって!」
そう言ってA君は思いっきりガラスを割ってしまい、
中に入っていきました。
何もなかったとしてもこれで確実に怒られるな…と思いながら、
みんなも後に続きます。
そこは居間でした。
左側に台所、正面の廊下に出て左には浴室と突き当たりにトイレ、
右には2階への階段と、本来玄関であろうスペース。
昼間ということもあり明るかったですが、
玄関が無いせいか廊下のあたりは薄暗く見えました。
古ぼけた外観に反して中は予想より綺麗….というより何もありません。
家具など物は一切なく、人が住んでいたような跡は何もない。
居間も台所もかなり広めではあったもののごく普通。
「何もないじゃん」
「普通だな〜 何かしら物が残ってるんだと思ってたのに」
何もない居間と台所をあれこれ見ながら、
男子3人はつまらなそうに持ってきたお菓子をボリボリ食べ始めました。
「......てことは、秘密は2階かな」
私とD子はD妹の手を取りながら2階に向かおうと廊下に出ました。
階段は…と廊下に出た瞬間、
私とD子は心臓が止まりそうになりました。
左にのびた廊下には途中で浴室があり突き当たりがトイレなのですが、
その間くらいの位置に鏡台が置かれ、
真前につっぱり棒のようなものが立てられていました。
そして、その棒に髪がかけられていたのです。
どう表現していいかわからないのですが、
カツラの様に髪型として形を成したものというか、
ロングヘアの女性の後ろ髪がそのままそこにあるという感じです。
(伝わりにくかったらごめんなさい)
位置的にも、平均的な身長なら大体その辺に頭がくるだろう
という様な位置で棒の高さが調節してあり、
まるで "女の人が鏡台の前で座ってる" のを再現したみたいな光景。
一気に鳥肌が立ち、
「何何!? ちょっと! 何なのこれ〜!?」と軽くパニックの私とD子。
何だ、何だ?と廊下に出てきた男子3人も意味不明な光景に唖然。
D妹だけが、あれなぁに? ときょとんとしていました。
「なんだよ、あれ? 本物の髪の毛か?」
「わかんない。触ってみるか?」
A君とB君はそんなことを言いましたが、
C君と私たちは必死で止めました。
「やばいからやめろって! 気持ち悪いし、絶対何かあるだろ!」
「そうだよ、やめなよ!」
どう考えても異様としか思えないその光景に恐怖を感じ、
ひとまずみんな居間に引っ込みました。
居間からは見えませんが、廊下の方に視線をやるだけでも嫌でした。
「おい、どうする…? 廊下通んないと2階行けないぞ」
「あたし.....もうやだ。あんなの、気持ち悪い」
「オレもなんかやばい気がする.....」
C君と私とD子の3人はあまりに予想外のものを見てしまい、
完全に探索意欲を失っていました。
「なんだよ、みんな。あれ見ないように行けばだいじょぶだって。
2階で何か出てきたって階段降りてすぐそこが出口だぜ?
しかもまだ昼間だぞ?」
A・B両人はどうしても2階を見たいらしく、
引け腰の私たち3人を急かしました。
「そんなこと言ったって…」
私たちが顔を見合わせどうしようかと思った時、はっと気付きました。
「あれ、D子? クルミちゃんは?」
「えっ?」
全員気が付きました。
D子の妹・クルミちゃんがいないのです。
私たちは唯一の出入口であるガラス戸の前にいたので、
外に出たということはありえません。
広めといえど居間と台所は一目で見渡せます。
その場にいるはずのクルミちゃんがいないのです。
「クルミ!? どこ!? 返事しなさい!!」
D子が必死に声を出しますが返事はありません。
「おいおい、もしかして上に行ったんじゃ…」
その一言に全員が廊下を見据えました。
「やだ! なんで!? 何やってんのあの子!?」
D子が涙目になりながら叫びます。
「落ち着けよ! とにかく、2階に行くぞ!」
さすがに怖いなどと言ってる場合でもなく、
すぐに廊下に出て階段を駆け上がっていきました。
「おーい、クルミちゃーん!」
「クルミー! いい加減にしてよ! 返事して出てきなさい!」
みんながクルミちゃんへ呼び掛けながら階段を進みますが、
返事はありません。
階段を上り終えると、部屋が2つありました。
どちらもドアは閉まっています。
まずすぐ正面のドアを開けました。
その部屋は外から見た時に窓があった部屋です。
中にはやはり何もなく、彼女の姿もありません。
「あっちだな」
私たちはもう一方のドアに近付き、
ゆっくりとドアを開けました。
クルミちゃんはいました。
ただ、私たちは言葉も出せずその場で固まりました。
その部屋の中央には、下にあるのと全く同じものがあったのです。
鏡台とその真前に立てられた棒、そしてそれにかかった長い後ろ髪。
異様な恐怖に包まれ、全員茫然と立ち尽くしたまま動けませんでした。
「ねえちゃん、これなぁに?」
不意にクルミちゃんが言い、次の瞬間とんでもない行動をとりました。
彼女は鏡台に近付き、
3つある引き出しの内、1番上の引き出しを開けたのです。
「これなぁに?」
クルミちゃんがその引き出しから取り出して私たちに見せたもの…
それは筆の様なもので、"禁后" と書かれた半紙でした。
意味がわからずに彼女を見つめるしかない私たち。
(この時、どうしてすぐに動けなかったのか、今でもわかりません)
彼女は構わずその半紙をしまって引き出しを閉め、
今度は2段目の引き出しから中のものを取り出しました。
全く同じもの、"禁后" と書かれた半紙です。
もう何が何だかわからず、私はがたがたと震えるしか出来ませんでしたが、
D子が我に返り、すぐさま彼女に駆け寄りました。
D子ももう半泣きになっています。
「何やってんのあんたは!」
妹を厳しく怒鳴りつけ、半紙を取り上げると
引き出しを開け、しまおうとしました。
この時、D妹が半紙を出した後、
すぐに2段目の引き出しを閉めてしまっていたのが問題でした。
慌てていたのか、D子は2段目ではなく3段目、
1番下の引き出しを開けたのです。
ガラッと引き出しを開けたとたん、
D子は中を見つめたまま動かなくなりました。
黙ってじっと中を見つめたまま、微動だにしません。
「ど、どうしたD子!? 何だよ!?」
ここでようやく私たちは動けるようになり、2人に駆け寄ろうとした瞬間、
ガンッ!! と大きな音をたてD子が引き出しを閉めました。
そして肩より長いくらいの自分の髪を口元に運び、
むしゃむしゃとしゃぶりだしたのです。
「お、おい? 何やってんだよ!?」
「ちょっとD子? しっかりして!」
みんなが声をかけても反応が無い。
ただひたすら、自分の髪をしゃぶり続けている。
その行動に恐怖を感じたのか、クルミちゃんも泣きだし、
ほんとうに緊迫した状況でした。
「おい! どうなってんだよ!?」
「し、知らねえよ! 何なんだよこれ!?」
「とにかく外に出てうちに帰るぞ!ここにいたくねえ!」
D子を3人が抱え、私はクルミちゃんの手を握り急いでその家から出ました。
その間もD子はずっと髪をびちゃびちゃとしゃぶっていましたが、
私たちはどうしていいかわからず、
とにかく大人のところへ行かなきゃ! という気持ちでした。
その空き家から1番近かった私の家に駆け込み、
大声で母を呼びました。
泣きじゃくる私とクルミちゃん、汗びっしょりで茫然とする男子3人、
そして奇行を続けるD子。
どう説明したらいいのかと頭がぐるぐるしていたところで、
声を聞いた母が何事かと現われました。
「お母さぁん!」
泣きながらなんとか事情を説明しようとしたところで
母は私と男子3人を突然ビンタで殴り、怒鳴りつけました。
「あんたたち、あそこへ行ったね!? あの空き家へ行ったんだね!?」
普段見たこともない形相に私たちは必死に首を縦に振るしかなく、
うまく言葉を発せませんでした。
「あんたたちは奥で待ってなさい。すぐみんなのご両親達に連絡するから」
そう言うと母はD子を抱き抱え、2階へ連れていきました。
私たちは言われた通り、私の家の居間でただぼーっと座り込み、
何も考えられませんでした。
それから1時間ほどはそのままだっと思います。
みんなの親たちが集まってくるまで、母もD子も2階から降りてきませんでした。
親たちが集まった頃に、ようやく母だけが居間に来て、ただ一言、
「みなさん。この子たちがあの家に行ってしまった」と言いました。
親たちがざわざわとしだし、
みんなが動揺したり取り乱したりしていました。
「お前ら! 何を見た!? あそこで何を見たんだ!?」
それぞれの親たちが一斉に我が子に向かって放つ言葉に、
私たちは頭が真っ白で応えられませんでしたが、
何とかA君とB君が懸命に事情を説明しました。
「見たのは鏡台と変な髪の毛みたいな… あとガラス割っちゃって…」
「他には!? 見たのはそれだけか!?」
「あとは…何かよくわかんない言葉が書いてある紙…」
その一言で急に場が静まり返りました。
と同時に2階からものすごい悲鳴が。
私の母が慌てて2階に上がり数分後、
母に抱えられて降りてきたのはD子のお母さんでした。
まともに見れなかったぐらい涙でくしゃくしゃでした。
「見たの…? D子は引き出しの中を見たの!?」
D子のお母さんが私たちに詰め寄り、そう問い掛けました。
「あんたたち、鏡台の引き出しを開けて中にあるものを見たか?」
「2階の鏡台の3段目の引き出しだ。どうなんだ?」
他の親たちも問い詰めてきました。
「1段目と2段目は僕らも見ました… 3段目は… D子だけです…」
そう言い終わった途端、
D子のお母さんがものすごい力で私たちの体を掴み、
「何で止めなかったの!? あんたたちは友だちなんでしょう!?
何で止めなかったのよ!?」と叫びだしたのです。
D子のお父さんや他の親たちが必死で押さえ、
「落ち着け!」「奥さんしっかりして!」となだめようとし、
しばらくしてやっと落ち着いたのか、
クルミちゃんを連れてまた2階へ上がっていってしまいました。
そこでいったん場を引き上げ、
私たち4人はB君の家に移り、B君の両親から話を聞かされました。
「お前たちが行った家はな、最初から誰も住んじゃいない。
あそこはあの鏡台と髪の為だけに建てられた家なんだ。
オレや他の親御さんたちが子供の頃からあった」
「あの鏡台は実際に使われていたもの、髪の毛も本物だ。
それから、お前たちが見たっていう言葉。この言葉だな?」
そういってB君のお父さんは紙とペンを取り、
"禁后" と書いて私たちに見せました。
「うん… その言葉だよ」
そう私たちが応えると、
B君のお父さんはくしゃっと丸めたその紙をごみ箱に投げ捨て、
そのまま話を続けました。
「これはな、あの髪の持ち主の名前だ。
読み方は知らないかぎり、まず出てこないような読み方だ」
「お前たちが知っていいのはこれだけだ。金輪際、あの家の話はするな。
近づくのもダメだ。わかったな?
とりあえず、今日はみんなうちに泊まってゆっくり休め」
そう言って席を立とうとしたB君のお父さんに
B君は意を決した様にこう聞きました。
「D子はどうなったんだよ!? あいつは何であんな…」
と言い終わらない内にB君のお父さんが口を開きました。
「あの子のことは忘れろ。もう2度と元には戻れないし、
お前たちとも2度と会えない。それに…」
B君のお父さんは少し悲しげな表情で続けました。
「お前たちはあの子のお母さんからこの先一生恨まれ続ける。
今回の件で誰かの責任を問う気はない。
だが、さっきのお母さんの様子でわかるだろ?
お前たちは、もう、あの子に関わっちゃいけないんだ」
そう言って、B君のお父さんは部屋を出ていってしまった。
私たちは何も考えられなかった。
その後どうやって過ごしたかもよくわからない。
本当に長い1日でした。
それからしばらくは普通に生活していました。
翌日から私の親もA君たちの親も一切この件に関する話はせず、
D子がどうなったかもわかりません。
学校には一身上の都合となっていた様ですが、
1ヵ月程してどこかへ引っ越してしまったそうです。
また、あの日、私たち以外の家にも連絡が行ったらしく、
あの空き家に関する話は自然と減っていきました。
ガラス戸などにも厳重な対策が施され中に入れなくなったとも聞いています。
私やA君たちはあれ以来一度もあの空き家に近づいておらず、
D子のこともあってか疎遠になっていきました。
高校も別々でしたし、私も他の3人も町を出ていき、
それからもう十数年以上になります。
ここまで下手な長文に付き合ってくださったのに申し訳ないのですが、
結局何もわからずじまいです。
ただ、最後に…
私が大学を卒業した頃ですが、
D子のお母さんから私の母宛てに手紙がありました。
内容はどうしても教えてもらえなかったのですが、
その時の母の言葉が意味深だったのが今でも引っ掛かっています。
「母親ってのは、最後まで子供のために隠し持ってる選択があるのよ。
もし、ああなってしまったのがあんただったとしたら、
私もそれを選んでたと思うわ。
それが間違った答えだとしてもね」
その後、老朽化などの理由でどうしても取り壊すことになった際、
初めて中に何があるかを住民たちは知りました。
そこにあったのは私たちが見たもの、あの鏡台と髪でした。
八千代の家は2階がなかったので、
玄関を開けた目の前に並んで置かれていたそうです。
八千代の両親がどうやったのかはわかりませんが、
やはり形を成したままの髪でした。
これが呪いであると悟った住民たちは、出来るかぎり慎重に運び出し、
新しく建てた空き家の中へと移しました。
この時、誤って引き出しの中身を見てしまったそうですが、
何も起こらなかったそうです。
これに関しては、供養をしていた人たちだったからでは?
ということになっています。
空き家は町から少し離れた場所に建てられ、
玄関がないのは出入りする家ではないから、
窓・ガラス戸は日当たりや風通しなど供養の気持ちからだということでした。
こうして誰も入ってはいけない家として町全体で伝えられていき、
大人たちだけが知る秘密となったのです。
ここまでが、あの鏡台と髪の話です。
鏡台と髪は八千代と貴子という母娘のものであり、
言葉は隠し名として付けられた名前でした。
ここから最後の話になります。
空き家が建てられて以降、中に入ろうとする者は1人もいませんでした。
前述の通り、空き家へ移る際に引き出しの中を見てしまったため、
中に何があるかが一部の人たちに伝わっていたからです。
私たちの時と同様、事実を知らない者に対して過剰に厳しくすることで、
何も起こらない様にしていました。
ところが私たちの親の間で一度だけ、事が起こってしまったそうです。
前回の投稿で私と一緒に空き家へ行ったAの家族について、
少しふれたのを覚えていらっしゃるでしょうか。
A君の祖母と母がもともと町の出身であり、
結婚して他県に住んでいたという話です。
これは事実ではありませんでした。
子供の頃に、A君の母とB君の両親、
そしてもう1人の男の子(E君)を入れた4人であの空き家へ行ったのです。
私たちとは違って夜中に家を抜け出し、
わざわざハシゴを持参して2階の窓から入ったそうです。
窓から入った部屋には何もなく、
やはり期待を裏切られた様な感じでガクッとし、
隣にある部屋へ行きました。
そこであの鏡台と髪を見て、
夜中ということもあり、凄まじい恐怖を感じます。
ところが4人のうち、A君の母はかなり肝が据わっていた様で、
怖がる3人を押し退けて近づいていき、
引き出しを開けようとさえしたそうです。
さすがに3人も必死で止め、その場は治まりますが、
問題はその後に起こりました。
その部屋を出て恐る恐る階段を降りるとまたすぐに恐怖に包まれます。
廊下の先にある鏡台と髪。
この時点で3人はもう帰ろうとしますが、
A君の母が問題を引き起こしてしまいました。
私たちの時のクルミちゃんの様に引き出しを開け、
中のものを出したのです。
彼女が取り出したのは1階の鏡台の1段目の引き出しの中にある
"紫逅" と書かれた紙で、
何枚かの爪も入っていたそうです。
さすがにやばいものでは..... と感じた3人は彼女を無理矢理引っ張り、
紙を元に戻して帰ろうとしますが、
じたばたしてるうちに棒から髪が落ちてしまったそうです。
空き家の中で最も異様な雰囲気であるその髪に
さすがの彼女も触れる勇気はなく、
4人はそのままにして帰ってきてしまいました。
それから2、3日はそのまま放っておいたらしいですが、
親にバレたら…という気持ちがあったので、元に戻しに行くことになります。
B両親はどうしても都合が合わなかったため、
A君の母とE君の2人で行くことになりました。
夜中に抜け出し、ハシゴを使って2階から入ります。
階段を降り、家から持ってきた箸で髪を掴んで何とか棒に戻しました。
さぁ早く帰ろうとE君は急かしましたが、
ホッとしたのか、A君の母はE君を怖がらせようと思い、
今度は2段目の引き出しを開けたのです。
”紫逅" と書かれた紙と何本かの歯が入っていました。
あまりの恐怖に、E君は取り乱し泣きそうになっていたのですが、
A君の母はこれを面白がってしまい、
彼にだけ、中が見える様な態勢で3段目の引き出しを開けたそうです。
彼が引き出しの中を見たのはほんの数秒ほどでした。
何があった〜?とA君の母が覗き込もうとした瞬間、
ガンッ!!と引き出しを閉め、
ぼーっとしたまま動かなくなりました。
A君の母はE君が仕返しにふざけてるんだと思ったのですが、
何か異常な空気を感じ、突然怖くなって、
彼を残したまま1人で帰ってしまったのです。
家に着いてすぐに母親に事情を話すと、
母親の顔色が変わり、異様な事態となりました。
E君の両親などに連絡し、親たちがすぐに空き家へ向かいます。
数十分ぐらいして、家で待っていたA君の母は
親たちに抱えられて帰ってきたE君を少しだけ見ました。
何かを頬張っている様で、
口元からは長い髪の毛が何本も見えていたそうです。
この後にB両親も呼び出され、親も交えて話したそうですが、
E君の両親は3人に何も言いませんでした。
ただ、言葉では表せない様な表情で、
ずっとA君の母を睨み付けていたそうです。
この後、3人はあの空き家にまつわる話を聞かされました。
E君のことに関しては、私たちに言ったのと全く同じことを言われた様でした。
そして、E君の家族がどこかへ引っ越していくまでの1ヵ月間ぐらいの間、
毎日A君の母の家にE君の両親が訪ねてきていたそうです。
このことで彼女は精神的に苦しい状態になり、
見かねた母親が他県の親戚のところへ預けたのでした。
その後、A君の母やE君がどうしていたのかはわかりませんが、
彼女が町に戻ってきたのはE君への償いからとのことです。
以上で話は終わりです。
最後に鏡台の引き出しに入っているものについて。
空き家には1階に八千代の鏡台、2階に貴子の鏡台があります。
八千代の鏡台には1段目は爪、2段目は歯が、
隠し名を書いた紙と一緒に入っています。
貴子の鏡台は1、2段目とも隠し名を書いた紙だけです。
八千代が "紫逅"、貴子が "禁后" です。
そして、問題の3段目の引き出しですが、
中に入っているのは手首だそうです。
八千代の鏡台には八千代の右手と貴子の左手、
貴子の鏡台には貴子の右手と八千代の左手が、
指を絡めあった状態で入っているそうです。
もちろん、今現在どんな状態になっているのかはわかりませんが。
D子とE君はそれを見てしまい、異常をきたしてしまいました。
厳密に言うと、
隠し名と合わせて見てしまったのがいけなかったということでした。
"紫逅" は八千代の母が、"禁后" は八千代が実際に書いたものであり、
3段目の引き出しの内側にはそれぞれの読み方が
びっしりと書かれているそうです。
空き家は今もありますが、
今の子供たちにはほとんど知られていない様です。
娯楽や誘惑が多い今ではあまり目につく存在ではないのかも知れません。
地域に関してはあまり明かせませんが、東日本ではないです。
それから、D子のお母さんの手紙についてですが、
これは控えさせていただきます。
D子とお母さんはもう亡くなられていると知らされましたので、
私の口からは何もお話出来ません。
怖い話投稿/ホラーテラーより
http://horror-terror.com/いんなが
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プロフィール
HN:
ポテチ/ラダ
年齢:
50
性別:
男性
誕生日:
1974/04/11
職業:
会社員
趣味:
単館系映画鑑賞、音楽や絵画鑑賞、そして絵を描くことと...
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