ポテチの水彩絵の世界にようこそ!
気分でコメントや画像とか、恐いのや面白い毒ある話とか、
現実の花の色と違ったりとか、妙な感じです。
俺には10歳上の従妹がいた。
とても品があって綺麗な人、そして優しかった。
彼女は俺の「アツシ」という名前を崩して「あっくん」と呼んでくれていた。
近所に住んでいたので、共働きで遅い晩まで両親がいなかったこともあり、
年の離れた私とよく遊んでくれた。
いつも一緒で彼女が大好きだった。
彼女は社会人になり、一緒に遊ぶ機会は減ったものの、
幼少と変わらず私は懐いていた。
私が中学に入学した頃、彼女は結婚した。
初恋の様なものを感じていた私は正直、ショックだった。
結婚と共に遠くへ引越した彼女とは会わなくなってしまった。
それからしばらくして久しぶりに家へ遊びに来た。
長い再会までの期間と幸せそうな彼女の顔に胸が詰まった。
何だか私は居たたまれなくなり、
両親と楽しそうに会話を交わすリビングを抜け出し、
2階の自分の部屋へ戻ろうとした時、彼女は追いかけて来た。
「待ってよ、あっくん。お久しぶりね」
「ああ、うん」
私は階段を昇りながら答えた。
複雑な感情を割り切れないまま、少しの苛立ちと少しの悲しみが混ざり、
彼女の顔をまともに見れない。
「一緒にお話をしましょうよ」
そんな俺の気持ちを知る筈なく俺の後ろをついて昇ってくる彼女。
「ねぇ、あっくんってば〜」
私は呼ばれて、手首を掴まれた。
その瞬間に心臓が痛いくらい跳ねて、とっさにそれを振りほどいてしまった。
すると階段でバランスを崩した彼女は呆気なく落ちていった。
派手な音が耳にしつつも、私は動けなかった。
両親が駆けつけ、救急車に運ばれる彼女。
そして知った。
彼女は懐妊したことを報告するために私の家へ来たということ。
私は彼女に病室で何度も何度も謝って泣いた。
そんな私を彼女は責めなかった。
「大丈夫よ、あっくん....」
私が振り払ったせいで流産したのに、
彼女はこの件を誰にも言わなかった。
その後、回復したものの、
私は受験ということもあって、互いに会えなくなった。
というか、会わなくなった。
数年後、私は大学を卒業し、
何人目かの彼女が出来てプロポーズをした。
結婚式は親戚一同が集まる。
もちろん、彼女も出席していた。
「おめでとう、あっくん」
ずっと彼女に対して後ろめたさを感じていた私は、
そんな祝福の言葉に不覚にも子供の様に泣いてしまった。
それがきっかけで再びと連絡を取り合う様になった。
やがて妻が妊娠した。
私は父親になるという歓びがこんなに大きいものだと思わなかった。
両親はもちろん、彼女にも電話して知らせた。
いつにも増して仕事に身が入る。
妻は妊娠9ヶ月目、もうすぐ家族が増える。そんな幸福の絶頂期だった。
そんなある日の残業中だ。
妻が病院へ運ばれたと電話が来たのは。
私は駆けつけると、手術室のランプが赤く光っていた。
その脇のベンチに座る両親と彼女。
彼女はたまたまの今日、自宅に遊びに来ていたらしい。
「奥さん、階段を踏み外して落ちたそうよ」
彼女が小さな声で隣に座った俺に話し掛けた。
「....あっくん」
しかし、どうしてなんだ。
妻は大きなお腹を気遣って寝室を1階に移したというのに。
その時、私の脳裏で過去の記憶が思い出されていた。
悲痛な面持ちで俯く両親を残して席をたった
放心気味の私の肩に手を置いた彼女。
そして、一言。
その場に似つかわしくない低い声音に驚いて顔を上げた。
柔らかな微笑みを作る彼女の瞳は初めてみる心底冷えたものだった。
「赤ちゃんは助かると良いね〜」
Steven Klein STUDIO: Photography
http://kleinstudio.us/
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プロフィール
HN:
ポテチ/ラダ
年齢:
50
性別:
男性
誕生日:
1974/04/11
職業:
会社員
趣味:
単館系映画鑑賞、音楽や絵画鑑賞、そして絵を描くことと...
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