ポテチの水彩絵の世界にようこそ!
気分でコメントや画像とか、恐いのや面白い毒ある話とか、
現実の花の色と違ったりとか、妙な感じです。
先程まで私の上に乗っかっていた衛兵の男がそそくさと部屋を出る時、
暖炉の上に置いていたガラスの靴を落としていった。
それから二度寝してようやく起きた遅い朝、
私は床に割れて散らばったその破片を片付けようとみていたら、
ふいに昔を思い出した。
父が亡くなったとたんに豹変した継母と連れ子の姉たち。
あの魔女に出会って、虐げられて下女の様な暮らしから一転、
この国の王子であった今の夫に見初められたのは、
もう10年前だったかしら。
私にとって大きな転機の象徴といえるガラスの靴。
壊れてしまったのはある意味、成るべくしてそう成った、
そんな気がする。
王室に迎えられてからは毎日が輝いていたわ。
貴族でもない私を温かく見守ってくれる寛大な王様と義母様。
そして愛してくれた夫。
でもそれはほんのつかの間。
娘を身籠ってからというもの、彼は身重になった私を避けるかの様に
毎晩、寝室から抜け出しては
他の女たちの部屋に入り浸って腰を振っている始末。
これこそ、現実。夢から呼び覚ませてくれてありがとうって感じね。
自分でいうのもナンだけど、
私は周りの女と比べたら顔の美貌は引けを取らないと自負している。
そんな私と "この国一番の美声年" と謳われた彼の子供だもの。
可愛くないわけがないわ。
娘が生まれてから他の女との浮気はなくなったけど、
私のところに戻ってきたわけではない。
娘に全ての愛情を注ぐべく、いつもベッタリ。
始めはそれが可愛いと思ってたけど、
どんどんエスカレートしていく彼の情熱。
ある日、見てしまったの。そして悟った。
あれは父親が子供に対してでなくて、
男が女に対して向けたものであったと。
他の女への浮気は別にいいのよ。
私は愛情が冷めてしまった男に縋るほど、未練がましい女ではないから。
一生愛し続けるなんてのは、所詮、幻想に過ぎないのは経験済み。
まぁ、さっき出て行った衛兵を筆頭に、私もいろんな男と寝ているからね。
お互い様ってやつかしら。
でも、娘は別。
道から外れるにも程があるわ。
ところで、あの魔女はどうしているのかしら。
最後、娘を身籠る前に魔法の鏡をくれてから姿を現さなくなってしまった。
そういえば、あの魔女。
娘に似ている気がする。
義父である国王が亡くなり、夫が王になってから5年後。
彼は病気になって廃人になってしまった。
周囲の者たちは隠れて私のことを魔女と呼ぶようになったみたいだけど、
別に私は魔法が使えるわけではないし、魔法といえば、あの鏡。
私が問いかけると何でも答えてくれる。
確かに、あの鏡に話しかける私の姿は傍目から見たら奇妙かもしれないわね。
唯一、私が信用できる親友の様なモノ。
でもおかげでこうして廃人になった夫に代わって、
素人のこの私がこの国を壊すことなく動かせているのだから、
ちょっとは大目に見てほしいものだわ。
なんたって、私は女王なんだから。
ところで私の娘、やっと死んでくれた様ね。
日頃より、この私をいつもこき下ろした様な態度には我慢が出来なかったけど、
なんとか衝動を抑えてきたわ。
でもある日、魔法の鏡がこういったの。
「あなたは美しい。でもあなたの娘はもっと美しい」と。
ショックで腰が抜けそうになったわ。
私の全てを奪ってきた彼女。
雪の様に白い肌、血の様に赤い唇、黒檀の様に黒い髪の完璧な美しさを持つ彼女。
私の唯一の自信である外見の美しさを遥かに越えて育った彼女。
もう限界。
だから城から追い出し、あらゆる手を使って彼女を陥れ、
最後はこの手で殺した。
そんな理由で実の娘に手をかけるなんて大それたこと、
あまりの罪深さ故に発狂してしまいそうなったわ。
それでもなんとか冷静に私自身を誤魔化して、こう確信することにしたの。
あの娘はあの魔女の生まれ変わりだと。
あのガラスの靴を私にくれたのは何かの企みに違いないと。
魔女に堕ちる前はごく平凡な女だった私。
両親に勧められるままに、平凡な男と結婚し、平凡な家庭を築き、
平凡なりに時折幸せを噛みしめつつ、真っ当に生きてきました。
ある日、悪友に誘われて妖しげな集会を目にした瞬間、
心を奪われてしまったのです。
それから密やかに、
見知らぬ男と女の如何わしい駆け引きで陶酔を繰り返すうちに、
"悪魔" と名乗る素晴らしく逞しい肉体に宿る魂の完全な虜と成り果て、
気付いたら私は魔女に。
その悪魔曰く、
「私と永遠に添い遂げたいのなら、君は生まれ変わらなくてはならない」と。
私は悪魔の言うとおりにプランを立て、依代となる女を捜し出し、
見事、美しい娘に生まれ変わることに成功しました。
しかし、この女が気付いてしまったのです。
悪魔が生まれ変わる寸前に彼女に渡せといわれた魔法の鏡。
これで全ては上手く計画が進むものだといっていたのに、
何故?
私は黒い森に逃げて、
炭坑で働く7人の男たちの小屋にて匿われることになりました。
毎日の様に荒くれた男たちの奉仕に勤しむ一方で、
あの愛しい悪魔を呼びつづけました。
でも答えてくれません。
生まれ変わることで私と永遠に添い遂げるのではなかったのかしら?
絶望に苛まれる中、
ある日、妖しげなリンゴ売りの老女が小屋に訪れました。
一目見てこの女が "依代の彼女" であることを見抜いたのですが、
もうどうでも良くなっていたので薦められるままにリンゴをかじると案の定、
私は倒れました。
その瞬間、肉体から私の意識だけ離れ、
己の冷えた肉体を見下ろしました。
嗚呼、私は死んでしまったのね。
今まで私がやってきたことは一体、何だったのかしら。
呆然としていると帰ってきた男たちが私の死体に駆け寄り、
悲しんでいます。
彼らは私の死体をガラスの棺に入れ、
森の動物たちと共に弔いをしていると、
白馬に跨がった美しい青年が天使の様に現れました。
彼は棺から私の死体を抱き起こし、
キスをしてこう言いました。
「おはよう。私の "半身" 」
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プロフィール
HN:
ポテチ/ラダ
年齢:
50
性別:
男性
誕生日:
1974/04/11
職業:
会社員
趣味:
単館系映画鑑賞、音楽や絵画鑑賞、そして絵を描くことと...
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