ポテチの水彩絵の世界にようこそ!
気分でコメントや画像とか、恐いのや面白い毒ある話とか、
現実の花の色と違ったりとか、妙な感じです。
夕方、私が小学校から帰宅すると、家に知らない男がいた。
はやく気付くべきだった....後悔の念が頭をよぎる。
そういえば、嫌な予感は朝からあった。
いつもなら、いつまでも寝ている私を叩き起こすあいつが変に優しかったし、
何より弁当の中身が豪華だった。
“行ってらっしゃい” の声も上擦っていた。
沈黙し、立ったままの私を見かねたその男は、あいつを一瞥し、頷くと立ち上がった。
またか....もういいよ。言うことはわかってる。
聞きなれた、そして、聞きたくも無いあの言葉を聞くのは.....
「やあ! カオリちゃん。今日から俺が新しいもう1人のパパだ。よろしくな!」
大きな体を屈めて差し出された男のゴツゴツとした右手を見つめながら、私は思った。
これでいったい何人目のパパだろう.....いいかげんにして欲しい!
私にもうパパは要らない!!
必要なのはママよ!!!
「この写真の男に何か見覚えはありませんか」
そう言われて差し出された写真を受け取る手が微かに震えた。
私はその眼を見た瞬間に6年前の忌々しい出来事を思い出していた。
かつては魅力的だとも勘違いしたずる賢い狐の様な切れ長の眼.....
高校時代の同級生、あの酒井慎一に間違いない。
今よりも50キロは太っていた私が、
卒業直前にひっそりと酒井の机の中に忍ばせたラブレターを
クラスじゅうにさらけ出し笑いものにした男だ。
「どうかいたしましたか」
「あっ、いえ....この人、何したんですか」
「区内で起きている連続コンビニ強盗の犯人です。
逃走に使ったと思われる原付が、まあ盗難車ですけどね、
それがこの辺りで見つかったものですから、目撃情報等をあたっている最中です」
何度も同じ説明をしているのだろう、刑事はやや早口で面倒くさそうに説明した。
それにしても陳腐な男。
私は写真をまじまじと見つめながら考えた。
こんなにはっきりと顔が映っているのだから放っておいてもすぐに捕まるだろう。
だがこれは酒井に対してささやかな復讐を果たす絶好の機会ではないか?
.....逃す手はない。
「見たことある.....気がします」
「本当ですか。いつ、どこでですか」
「あの、この辺りでリヤカーを引いて空き缶とかを集めている人たちいますよね。
そういう人たちと一緒にいて、若い人もいるんだなって思ったので覚えているんです」
「そのホームレス連中と一緒にいた若い男がこの写真の男なのですね」
「すごく似ているって気がします。
直接そういう人たちに聞いて廻ってみてはどうでしょうか」
「わかりました。ご協力に感謝します」
そう言って足早に去っていく刑事の背を横目で見送りながら、
私は思わず呟いた。
「捜査は足で稼げってね。せいぜい頑張って、酒井くん」
今の自分を表現するなら、地に落ちた小説家、だろうか。
要するにクズだ。
当たったのはデビュー作だけで、それ以降が続かない。
作家としての力はとっくに枯れ果てていた。
もちろん筆だけで食っていけるはずもなく、
今では相方にも働いてもらう始末。
なんて情けない。
俺はいつまでこんな生活続けるんだ。
書斎で独り打ちひしがれていると、キッチンの方から相方がやってきた。
「よう! 棚の奥から高そうなワインが出てきたぞ。仕事中だけど、ちょっと飲もうや」
「ごめん。今は少し集中したいんだ。それにお前にだって先にやることがあるだろ?」
僕は背中を向け、止まっていた手を動かし始めた。
罪悪感から、まともに相方の顔を見ることが出来ない。
「何だよ、ちょっとぐらいいいじゃないか。後で欲しくなっても残ってねえぞ」
ドスドスと去っていく相方の足音を聞いていると急に涙がこぼれそうになった。
僕は最低な男だ。
こんな惨めな人生に、あろうことか、あいつまで巻き込んで.....
けど、あいつは決して俺を責めなかった。
それどころか、こういう生活も慣れたら楽しいものだ、と笑って見せた。
もうあんな悲しい台詞言わせやしない。
今度こそ一発ドデカいのを当てて、新しい人生を始めるんだ!
数分後、再び相方が顔を覗かせた。
「めぼしい物はだいたい集めたけど、そっちはどうだ?」
「あぁ、ちょうど片付いたところだよ。今回は当たりだといいけど」
カチャリ、と俺は金庫を開けた。
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プロフィール
HN:
ポテチ/ラダ
年齢:
50
性別:
男性
誕生日:
1974/04/11
職業:
会社員
趣味:
単館系映画鑑賞、音楽や絵画鑑賞、そして絵を描くことと...
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