ポテチの水彩絵の世界にようこそ!
気分でコメントや画像とか、恐いのや面白い毒ある話とか、
現実の花の色と違ったりとか、妙な感じです。
6年前、俺が中学だった頃、1人のとても大事な友を亡くしました。
表向きの原因は精神病でしたが、実際はある奴等に憑依されたからです。
それから....
俺にとっては忘れてしまいたい記憶の1つですが、
先日、古い友と話す機会があり、あの時のことをまざまざと思い出してしまいました。
ここで、文章にすることで少し客観的になり、恐怖を忘れられると思いますので、
最後、綴りたいと思います。
(とても長文なので、続きは「つづきはこちら」にて)
同じ性癖の悪友5人組(A・B・C・D・俺)は、皆家業を継ぐことになっていて、
高校受験組を横目に暇を持て余していました。
学校も、俺たちがサボったりするのは受験組の邪魔にならなくていいと考えていたので、
体育祭後は朝学校に出て来さえすれば、
後は抜け出しても滅多に怒られることはありませんでした。
ある日、友人のA・Bが、近所の屋敷の話を聞いてきました。
改築したばかりの屋敷の持ち主が首を吊って自殺して一家は離散、
今では空き家になってるというのです。
サボった後のたまり場の確保に苦労していた俺たちは、
そこなら淫らなことや酒タバコが思う存分できると考え、
翌日すぐに昼から学校を抜けて行きました。
その空き家は外から様子のわからない造りのとても立派なお屋敷。
こんなところに入っていいのか、少しビビりましたが、
A・Bは「大丈夫!」を連発しながらどんどん中に入って行きます。
躊躇しているとAが「ほら、早くこいよ!」と言うので、仕方なく着いていきました。
既に調べを付けていたのか、勝手口が空いていました。
書斎のようなところに入り、窓から顔を出さないようにして一斉に全裸になり、
こそこそと酒盛りを始めました。
さすがにその場ではあまり声が出せないのですぐにやる気をなくし、飽きてきた俺たち。
そこで、俺たち5人で家を探検することにしました。
すぐに、友人のCが「あれ何や?」と、
今いる部屋の壁の上の方に何かに気が付きました。
壁の上部に、学校の音楽室や体育館の放送室のような感じの小さな窓が2つ。
よく見ると壁のこちら側にはドアがあって、
そのドアは、こちら側からは本棚で塞がれていました。
「こっちも部屋か....なぁ、おい」とAに促され、彼を肩車すると、
彼は手を伸ばして左上の方の窓を開けました。
それにしても、何興奮してんだか....首にガチガチなモノが当たってるぜ!
「よう、そっちの部屋に移動してヤラないか?」
「そこなら多少、声出しても大丈夫やろ」
....今思うと、その窓から若干悪臭が漂っていることにその時、疑問を持つべきでした。
しかし、酒飲みながら盛り合う気満々な若い俺たちの欲望に任しつつ、
無理矢理、窓から部屋に入りました。
部屋はカビや埃にまみれて饐えたような臭いが漂っています。
雨漏りしているのか、より一層、室内はジメっとしていました。
部屋は実際に「音楽室」と言えるものではなくも、防音処置でしょうか。
壁に手作りで防音材の様なものの上から壁紙が貼ってあることはわかりました。
その壁紙は湿気でカピカピになっていて、
今にも剥がれ落ちそうなくらいにボロボロ状態。
「....これじゃ、ちょっと布団でもひかないと無理なんじゃない?」
「確かに、ここでヤルには気が引けんな...」
「俺は別にいいけど」とかなんとかしゃべりつつ、薄暗い中、よく見回してみると、
部屋の中はとりたてて調度品もなく質素な造りでしたが、小さな机が隅に置かれており、
その上に、真っ黒に塗りつぶされた写真が大きな枠の写真立てに入ってました。
「なんやこれ、気持ち悪い」と言ってAが写真入れを手にとって、持ち上げた瞬間、
額裏から1枚の紙が落ち、その中から束になった髪の毛がバサバサ出てきました。
紙は御札でした。
みんなはヤバい!と思いつつも、奇妙な戦慄で声が出せませんでした。
顔面蒼白のAを見てBが急いでここを出ようと言い、
逃げるようにBが窓によじ登った時、その壁の壁紙全部がフワッと剥がれました。
すると、壁には写真立ての裏から出てきたのと同じ御札が一面に....
「何やこれ!」酒に弱いCはその場でウッと反吐しそうになりました。
「やばいて!やばいて!」
「おいC!吐いてる場合かよ、急げ!」
よじ登るBの尻を私とDでぐいぐい押し上げました。
もう何がなんだか、頭が真っ白になってワケがわかりませんでした。
後ろでは誰かが祟られたかの様に「いーーー、いーーー」と声を出しています。
きっとAです。
後ろ髪引かれるものの、恐ろしくて振り返ることもできませんでした。
無我夢中でよじ登って、反対側の部屋に飛び降りました。
Dも出てきて、部屋側からCを引っ張り出そうとすると、
「うお、痛てっ、止めろよっ!」と、Cが叫びます。
「おいA!引っ張んな足!」
部屋の向こうではAらしき声が変な音で呻いています。
Cはよほど凄い勢いでもがいているのか、Cの足がこっちの壁を蹴る大きな音がしました。
「B! 神主さん連れて来い!」と、後ろ向きにDが叫びました。
「なんかAに憑いとる、裏からまわって神社の神主さん連れて来いて!」
先に出たBが着の身着のまま、縁側から裸足で走っていき、
俺たちは窓からCを引き抜きました。
「ケツ! ケツ!」「どうしたC!痛いか?」
「そんな痛うはないけど、なんかケツ噛まれた」
見ると、Cのムッチリしたケツっぺたは丸ごと何かに食いつかれる寸前の様に、
丸く歯形がついて唾液で濡れています。
相変わらず中からはAの声がしますが、
怖くて俺たちは窓から中を見ることができませんでした。
「あいつ、俺に祟らんかなぁ」
「祟るてなんや!Aはまだ生きとるんやぞ!」
「俺出てくる時、ケツに顔埋めて足引っ張るもんだから、
俺、あいつをめちゃくちゃ蹴ってきたんだ....」
しばらくして、「しらー!」と怒鳴り声が聞こえてきたと思うと、
縁側からトレーナー姿のがっしりした神主が真青な顔して入ってきました。
「ぬしら何か! 何しよるんか! 馬鹿者が!」
一緒に入ってきたBは、もう涙と鼻水でぐじょぐじょの顔になっていました。
「ええからお前らは帰れ!
こっちから出て神社の裏から社務所入って、そこに居る氏子に見てもらえ、あとおい!」と
いきなり俺を捕まえ、後ろ手にひねり上げられました。
後ろで何かザキっと音がしました。
「....よし行け」
そのままドンと背中を押されて俺たちは、わけのわからないまま走りました。
それから俺たち(俺・B・C・D)は裏の山に上がって、神社の社務所に行くと、
白い服を着た若い氏子が待ち構えていました。
めちゃめちゃ怒られたような気もしますが、
それから後は逃げた安堵感でよく覚えていません。
それから、Aが学校に来なくなりました。
俺の家の親が神社から呼ばれたことも何回かありましたが、
詳しい話は何もしてくれませんでした。
ただ「山の裏には絶対行くな」と、言われました。
俺たちも、あんな恐ろしい目に遭ったので、山など行くはずもなく、
学校の中でも小さくなって過ごしていました。
期末試験が終わった日、生活指導の先生から呼ばれました。
「今までの積み重ねまとめて大目玉かな。殴られるなこら....」と覚悟して進路室に行くと、
俺の他にも呼ばれたBとDが大人しく座っていて、あの神主も来ていました。
生活指導の先生などいません。
俺が入ってくるなり神主が言いました。
「あんなぁ、Cが亡くなったよ」
....信じられませんでした。
Cが昨日学校に来ていなかったこともその時知りました。
神主曰く、「学校サボって、こっちで括っとるAの様子を見にきよったんよ。
病院の見舞いじゃないとやけん、危ないってわかりそうなもんやけどね。
裏の格子から座敷を覗いた瞬間にもの凄い声出して、倒れよった。
....駆けつけた時には、もう、白目むいて虫螺の息だったよ」
俺はCが死んだのにそんな言い方ないだろう!と思って、口答えしそうになりましたが、
神主は真剣な目で俺たちの方を見てこう言いました。
「ええか、Aはもうおらんと思え。Cのことも絶対今から忘れろ。
あのモノは目が見えんけん、自分のことを知らん者のところには憑きには来ん。
このことを覚えとる者がおったら、何年かかってもあのモノはそいつのところに来る。
来たら憑かれて死ぬんぞ。
おう、それと、髪は伸ばすなよ。
もしあのモノに出会ってしまって逃げた時、奴は最初に髪を引っ張るけんな」
あの当日、神主は私の少し伸びてた後ろ毛をハサミで切ったのです。
何かのまじない程度に思っていましたが、ああ、そういうことだったのかと。
俺たちは重い気持ちで進路室を出ました。
卒業して家業を継ぐのは、その時から諦めなければいけませんでした。
その後、俺たちはバラバラの県で進路につき、絶対に顔を合わせない様に、
もし会っても他人のふりをすることにしなければなりませんでした。
俺は、1年遅れて隣県の高校に入ることができ、
過去を忘れて自分の生活に没頭しました。
もちろん、髪は短く刈ってあります。
床屋で「坊主に」と頼むたび、神主の話を思い出していました。
もしかしたら今日来るか、明日来るか、と思いながら、長い3年が過ぎました。
その後、俺は更に浪人するも、他県の大学に入ることができました。
そして2年後。
....少し気を許して盆に帰省したのがいけませんでした。
もともと俺はおじいちゃん子で、祖父はその年の正月に亡くなっていました。
急のことだったのですが、「せめて初盆くらいは帰ってこんか」と、
電話で両親も言っていました。
....それがいけませんでした。
新聞を買おうと駅の売店に寄ると、中学時代の同じクラスだった女の子が売り子でした。
彼女は俺を見るなり、ボロボロと泣き出して、
BとDがそれぞれ死んだことをまくし立てました。
Bは卒業後まもなく、下宿の自室に閉じこもり、全裸のまま首をくくっていたそうです。
部屋は雨戸とカーテンが閉められ、部屋じゅうの扉という扉をガムテープ封印し、
さらに自分の髪の毛をその上から1本1本、几帳面に張り付けていたということでした。
Bの瞼は、鑞で自分の耳と瞼に封をしようとしたのか、
そんな痕を残して発見されたという。
Dは17歳の夏、何かに怯えるように、四国まで逃げたそうですが、
松山の近郊の町で、パンツ1枚の姿でケタケタ笑いながら歩いているのを見つかりました。
誰かしらにレイプされた痕跡があり、
彼の後頭部は烏がむしったように髪の毛が抜かれていたそうです。
収容された病院で高熱を出して、明くる朝には冷たくなっていたとのこと。
Dの瞼は、閉じるのではなく、絶対閉じない様にしようとしたのか、
自らナイフで切り取ろうとした痕もあったらしい。
この時ほど、中学時代の人間関係を呪ったことはありません。
BとDの末路など、今の私にはどうでもいい話でした。
つまり、あのモノを覚えているのは、
俺1人しか残っていないと、気づかされてしまったのです。
胸が強く締め付けられるような感覚で家に帰り着くと、家には誰もいませんでした。
後で知ったことですが、私の地方は「忌廻し」と云って、
特に強い忌み事のあった家は、
本家であっても初盆を奈良の寺で行うという風習があったのです。
そして俺は連れてこられたのでした。
それから3日間、私は39度以上の熱が続き、実家で寝込まなければなりませんでした。
「たしか、Dも高熱出してからとかいってたな....」とこの時、私は死を覚悟しました。
仏間に布団を敷き、白い服を着て、水を飲みながら寝ていました。
3日目の夜明けの晩、夢にAが立ちました。
剣道部で共に鍛えて立派な体格をしていたAは骨と皮の姿になり、黒ずんで、白目でした。
「お前1人やな」
「....ああ、そうだな」
「お前もこっち来てくれよ」
「....お前怖いよ」
「俺がどう見えるか知らないが、
こっちに来たらあの頃と同じようにずっと一緒にいられるぞ」
「いやじゃ」
「俺はお前のことが....そういや、お前が好きだったCが会いたがっとるぞ」
「いやじゃ」
「お前来んとCは毎日きっついリンチじゃ。
逆さ吊りでケツにブッとい棍棒ブチ込まれては蹴り上げられよるぞ、かわいそうやろ」
「うそつけ。地獄がそんなSMみたいなわけないやろ」
「ハハハ! 地獄か...地獄ちゅうのはなぁ....」
そこで目を覚ましました。
自分の息の音で喉がヒイヒイ音を立てていました。
枕元を見ると、祖父の位牌にヒビが入っていました。
俺は、考えました。
もしかしたら、俺があの時の話を多くの人に話せば、
あのモノが俺を探し当て、憑依される確率は下がるのではないかということを。
それにしてもあいつ、今だに勘違いしたままなんだな....
まぁ、俺たちの関係がいつも複数であんなだったし、
直接伝えたわけではないから仕方ないと思うが....
お前は俺がCが好きだったみたいなことを言ってたけど、
....俺はお前が好きだったんだよ。
今となってはどうしようもないのだけれどね。
高校受験組を横目に暇を持て余していました。
学校も、俺たちがサボったりするのは受験組の邪魔にならなくていいと考えていたので、
体育祭後は朝学校に出て来さえすれば、
後は抜け出しても滅多に怒られることはありませんでした。
ある日、友人のA・Bが、近所の屋敷の話を聞いてきました。
改築したばかりの屋敷の持ち主が首を吊って自殺して一家は離散、
今では空き家になってるというのです。
サボった後のたまり場の確保に苦労していた俺たちは、
そこなら淫らなことや酒タバコが思う存分できると考え、
翌日すぐに昼から学校を抜けて行きました。
その空き家は外から様子のわからない造りのとても立派なお屋敷。
こんなところに入っていいのか、少しビビりましたが、
A・Bは「大丈夫!」を連発しながらどんどん中に入って行きます。
躊躇しているとAが「ほら、早くこいよ!」と言うので、仕方なく着いていきました。
既に調べを付けていたのか、勝手口が空いていました。
書斎のようなところに入り、窓から顔を出さないようにして一斉に全裸になり、
こそこそと酒盛りを始めました。
さすがにその場ではあまり声が出せないのですぐにやる気をなくし、飽きてきた俺たち。
そこで、俺たち5人で家を探検することにしました。
すぐに、友人のCが「あれ何や?」と、
今いる部屋の壁の上の方に何かに気が付きました。
壁の上部に、学校の音楽室や体育館の放送室のような感じの小さな窓が2つ。
よく見ると壁のこちら側にはドアがあって、
そのドアは、こちら側からは本棚で塞がれていました。
「こっちも部屋か....なぁ、おい」とAに促され、彼を肩車すると、
彼は手を伸ばして左上の方の窓を開けました。
それにしても、何興奮してんだか....首にガチガチなモノが当たってるぜ!
「よう、そっちの部屋に移動してヤラないか?」
「そこなら多少、声出しても大丈夫やろ」
....今思うと、その窓から若干悪臭が漂っていることにその時、疑問を持つべきでした。
しかし、酒飲みながら盛り合う気満々な若い俺たちの欲望に任しつつ、
無理矢理、窓から部屋に入りました。
部屋はカビや埃にまみれて饐えたような臭いが漂っています。
雨漏りしているのか、より一層、室内はジメっとしていました。
部屋は実際に「音楽室」と言えるものではなくも、防音処置でしょうか。
壁に手作りで防音材の様なものの上から壁紙が貼ってあることはわかりました。
その壁紙は湿気でカピカピになっていて、
今にも剥がれ落ちそうなくらいにボロボロ状態。
「....これじゃ、ちょっと布団でもひかないと無理なんじゃない?」
「確かに、ここでヤルには気が引けんな...」
「俺は別にいいけど」とかなんとかしゃべりつつ、薄暗い中、よく見回してみると、
部屋の中はとりたてて調度品もなく質素な造りでしたが、小さな机が隅に置かれており、
その上に、真っ黒に塗りつぶされた写真が大きな枠の写真立てに入ってました。
「なんやこれ、気持ち悪い」と言ってAが写真入れを手にとって、持ち上げた瞬間、
額裏から1枚の紙が落ち、その中から束になった髪の毛がバサバサ出てきました。
紙は御札でした。
みんなはヤバい!と思いつつも、奇妙な戦慄で声が出せませんでした。
顔面蒼白のAを見てBが急いでここを出ようと言い、
逃げるようにBが窓によじ登った時、その壁の壁紙全部がフワッと剥がれました。
すると、壁には写真立ての裏から出てきたのと同じ御札が一面に....
「何やこれ!」酒に弱いCはその場でウッと反吐しそうになりました。
「やばいて!やばいて!」
「おいC!吐いてる場合かよ、急げ!」
よじ登るBの尻を私とDでぐいぐい押し上げました。
もう何がなんだか、頭が真っ白になってワケがわかりませんでした。
後ろでは誰かが祟られたかの様に「いーーー、いーーー」と声を出しています。
きっとAです。
後ろ髪引かれるものの、恐ろしくて振り返ることもできませんでした。
無我夢中でよじ登って、反対側の部屋に飛び降りました。
Dも出てきて、部屋側からCを引っ張り出そうとすると、
「うお、痛てっ、止めろよっ!」と、Cが叫びます。
「おいA!引っ張んな足!」
部屋の向こうではAらしき声が変な音で呻いています。
Cはよほど凄い勢いでもがいているのか、Cの足がこっちの壁を蹴る大きな音がしました。
「B! 神主さん連れて来い!」と、後ろ向きにDが叫びました。
「なんかAに憑いとる、裏からまわって神社の神主さん連れて来いて!」
先に出たBが着の身着のまま、縁側から裸足で走っていき、
俺たちは窓からCを引き抜きました。
「ケツ! ケツ!」「どうしたC!痛いか?」
「そんな痛うはないけど、なんかケツ噛まれた」
見ると、Cのムッチリしたケツっぺたは丸ごと何かに食いつかれる寸前の様に、
丸く歯形がついて唾液で濡れています。
相変わらず中からはAの声がしますが、
怖くて俺たちは窓から中を見ることができませんでした。
「あいつ、俺に祟らんかなぁ」
「祟るてなんや!Aはまだ生きとるんやぞ!」
「俺出てくる時、ケツに顔埋めて足引っ張るもんだから、
俺、あいつをめちゃくちゃ蹴ってきたんだ....」
しばらくして、「しらー!」と怒鳴り声が聞こえてきたと思うと、
縁側からトレーナー姿のがっしりした神主が真青な顔して入ってきました。
「ぬしら何か! 何しよるんか! 馬鹿者が!」
一緒に入ってきたBは、もう涙と鼻水でぐじょぐじょの顔になっていました。
「ええからお前らは帰れ!
こっちから出て神社の裏から社務所入って、そこに居る氏子に見てもらえ、あとおい!」と
いきなり俺を捕まえ、後ろ手にひねり上げられました。
後ろで何かザキっと音がしました。
「....よし行け」
そのままドンと背中を押されて俺たちは、わけのわからないまま走りました。
それから俺たち(俺・B・C・D)は裏の山に上がって、神社の社務所に行くと、
白い服を着た若い氏子が待ち構えていました。
めちゃめちゃ怒られたような気もしますが、
それから後は逃げた安堵感でよく覚えていません。
それから、Aが学校に来なくなりました。
俺の家の親が神社から呼ばれたことも何回かありましたが、
詳しい話は何もしてくれませんでした。
ただ「山の裏には絶対行くな」と、言われました。
俺たちも、あんな恐ろしい目に遭ったので、山など行くはずもなく、
学校の中でも小さくなって過ごしていました。
期末試験が終わった日、生活指導の先生から呼ばれました。
「今までの積み重ねまとめて大目玉かな。殴られるなこら....」と覚悟して進路室に行くと、
俺の他にも呼ばれたBとDが大人しく座っていて、あの神主も来ていました。
生活指導の先生などいません。
俺が入ってくるなり神主が言いました。
「あんなぁ、Cが亡くなったよ」
....信じられませんでした。
Cが昨日学校に来ていなかったこともその時知りました。
神主曰く、「学校サボって、こっちで括っとるAの様子を見にきよったんよ。
病院の見舞いじゃないとやけん、危ないってわかりそうなもんやけどね。
裏の格子から座敷を覗いた瞬間にもの凄い声出して、倒れよった。
....駆けつけた時には、もう、白目むいて虫螺の息だったよ」
俺はCが死んだのにそんな言い方ないだろう!と思って、口答えしそうになりましたが、
神主は真剣な目で俺たちの方を見てこう言いました。
「ええか、Aはもうおらんと思え。Cのことも絶対今から忘れろ。
あのモノは目が見えんけん、自分のことを知らん者のところには憑きには来ん。
このことを覚えとる者がおったら、何年かかってもあのモノはそいつのところに来る。
来たら憑かれて死ぬんぞ。
おう、それと、髪は伸ばすなよ。
もしあのモノに出会ってしまって逃げた時、奴は最初に髪を引っ張るけんな」
あの当日、神主は私の少し伸びてた後ろ毛をハサミで切ったのです。
何かのまじない程度に思っていましたが、ああ、そういうことだったのかと。
俺たちは重い気持ちで進路室を出ました。
卒業して家業を継ぐのは、その時から諦めなければいけませんでした。
その後、俺たちはバラバラの県で進路につき、絶対に顔を合わせない様に、
もし会っても他人のふりをすることにしなければなりませんでした。
俺は、1年遅れて隣県の高校に入ることができ、
過去を忘れて自分の生活に没頭しました。
もちろん、髪は短く刈ってあります。
床屋で「坊主に」と頼むたび、神主の話を思い出していました。
もしかしたら今日来るか、明日来るか、と思いながら、長い3年が過ぎました。
その後、俺は更に浪人するも、他県の大学に入ることができました。
そして2年後。
....少し気を許して盆に帰省したのがいけませんでした。
もともと俺はおじいちゃん子で、祖父はその年の正月に亡くなっていました。
急のことだったのですが、「せめて初盆くらいは帰ってこんか」と、
電話で両親も言っていました。
....それがいけませんでした。
新聞を買おうと駅の売店に寄ると、中学時代の同じクラスだった女の子が売り子でした。
彼女は俺を見るなり、ボロボロと泣き出して、
BとDがそれぞれ死んだことをまくし立てました。
Bは卒業後まもなく、下宿の自室に閉じこもり、全裸のまま首をくくっていたそうです。
部屋は雨戸とカーテンが閉められ、部屋じゅうの扉という扉をガムテープ封印し、
さらに自分の髪の毛をその上から1本1本、几帳面に張り付けていたということでした。
Bの瞼は、鑞で自分の耳と瞼に封をしようとしたのか、
そんな痕を残して発見されたという。
Dは17歳の夏、何かに怯えるように、四国まで逃げたそうですが、
松山の近郊の町で、パンツ1枚の姿でケタケタ笑いながら歩いているのを見つかりました。
誰かしらにレイプされた痕跡があり、
彼の後頭部は烏がむしったように髪の毛が抜かれていたそうです。
収容された病院で高熱を出して、明くる朝には冷たくなっていたとのこと。
Dの瞼は、閉じるのではなく、絶対閉じない様にしようとしたのか、
自らナイフで切り取ろうとした痕もあったらしい。
この時ほど、中学時代の人間関係を呪ったことはありません。
BとDの末路など、今の私にはどうでもいい話でした。
つまり、あのモノを覚えているのは、
俺1人しか残っていないと、気づかされてしまったのです。
胸が強く締め付けられるような感覚で家に帰り着くと、家には誰もいませんでした。
後で知ったことですが、私の地方は「忌廻し」と云って、
特に強い忌み事のあった家は、
本家であっても初盆を奈良の寺で行うという風習があったのです。
そして俺は連れてこられたのでした。
それから3日間、私は39度以上の熱が続き、実家で寝込まなければなりませんでした。
「たしか、Dも高熱出してからとかいってたな....」とこの時、私は死を覚悟しました。
仏間に布団を敷き、白い服を着て、水を飲みながら寝ていました。
3日目の夜明けの晩、夢にAが立ちました。
剣道部で共に鍛えて立派な体格をしていたAは骨と皮の姿になり、黒ずんで、白目でした。
「お前1人やな」
「....ああ、そうだな」
「お前もこっち来てくれよ」
「....お前怖いよ」
「俺がどう見えるか知らないが、
こっちに来たらあの頃と同じようにずっと一緒にいられるぞ」
「いやじゃ」
「俺はお前のことが....そういや、お前が好きだったCが会いたがっとるぞ」
「いやじゃ」
「お前来んとCは毎日きっついリンチじゃ。
逆さ吊りでケツにブッとい棍棒ブチ込まれては蹴り上げられよるぞ、かわいそうやろ」
「うそつけ。地獄がそんなSMみたいなわけないやろ」
「ハハハ! 地獄か...地獄ちゅうのはなぁ....」
そこで目を覚ましました。
自分の息の音で喉がヒイヒイ音を立てていました。
枕元を見ると、祖父の位牌にヒビが入っていました。
俺は、考えました。
もしかしたら、俺があの時の話を多くの人に話せば、
あのモノが俺を探し当て、憑依される確率は下がるのではないかということを。
それにしてもあいつ、今だに勘違いしたままなんだな....
まぁ、俺たちの関係がいつも複数であんなだったし、
直接伝えたわけではないから仕方ないと思うが....
お前は俺がCが好きだったみたいなことを言ってたけど、
....俺はお前が好きだったんだよ。
今となってはどうしようもないのだけれどね。
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プロフィール
HN:
ポテチ/ラダ
年齢:
50
性別:
男性
誕生日:
1974/04/11
職業:
会社員
趣味:
単館系映画鑑賞、音楽や絵画鑑賞、そして絵を描くことと...
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