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ポテチの水彩絵の世界にようこそ! 気分でコメントや画像とか、恐いのや面白い毒ある話とか、 現実の花の色と違ったりとか、妙な感じです。
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http://blog.cnobi.jp/v1/blog/user/7170818ba3679a9c8a30a9deff30364e/1315539755

親父の実家は自宅から車で2時間弱くらいのところにある農家なんだけど、
俺は何かそういった雰囲気が好きで、高校になってバイクに乗るようになると、
夏休みとか冬休みなんかにはよく1人で遊びに行ってた。
行けば、祖父と祖母も「よく来てくれた」と喜んで迎えてくれたしね。
でも、最後に行ったのが高校3年に進級する直前だから、
もう10年以上も行っていないことになる。
決して「行かなかった」んじゃなくて「行けなかった」んだけど、
その訳はこんなことだ。

春休みに入ったばかりのこと、いい天気に誘われて親父の実家にバイクで行った。
まだ寒かったけど、広縁はぽかぽかと気持ちよく、そこでしばらく寛いでいた。
そうしたら、「ぽぽ、ぽぽっぽ、ぽ、ぽっ…」と変な音が聞こえてきた。
機械的な音じゃなくて、人が発してるような感じ。
それも濁音とも半濁音とも、どちらにも取れるような感じだった。
何だろうと思っていると、庭の生垣の上に帽子があるのを見つけた。
生垣の上に置いてあったわけじゃない。
帽子はそのままスーッと横に移動し、垣根の切れ目まで来ると、1人の女性が見えた。
まあ、帽子はその彼女が被っていたわけだ。
彼女は白っぽいワンピースを着ていた。
しかし、生垣の高さは2mくらいある。
その生垣から頭を出せるってどれだけ背の高い女なんだ.....と驚いていると、
彼女はまた移動して視界から消えた。
帽子も消えていた。
いつの間にか「ぽぽぽ」という音も無くなっていた。

 その時は、背が高い女が超厚底のブーツを履いていたか、
踵の高い靴を履いた背の高い男が女装したかくらいにしか思わなかった。

親父の実家に到着した後、居間でお茶を飲みながら、
さっきのことを祖父と祖母に何気なく話した。
「さっき、大きな女の人を見たよ。男が女装してたのかなぁ」
そしたら別に「へぇ〜」とか「あらあら」くらいしか言わなかったけど、
「垣根より背が高かった。帽子を被っていて『ぽぽぽ』とか変な声出してたし」
と言ったとたん、2人の動きが止ったんだよね。
いや、本当にピタリっと止った。

その後、「いつ見た」「どこで見た」「垣根よりどのくらい高かった」と、
祖父が怒ったような顔付きで質問を浴びせてきた。
彼の気迫に押されながらもそれに答えると、
急に黙り込んで廊下にある電話まで行き、何処かに電話をかけだした。
引き戸が閉じられていたため、何を話しているのかは良く分からない。
祖母は心なしか震えているように見えた。

祖父は電話を終えたのか、戻ってくると、
「今日は泊まっていけ。いや、今日は帰すわけには行かなくなった」と言う。
.....俺は何か、とんでもなく悪いことをしてしまったんだろうか。
と必死に考えたが、何も思い当たらない。
あの女だって、自分から見に行ったわけじゃなく、あちらから現れたわけだし....
すると、祖父は「ばあさん、後頼む。俺はKさんを迎えに行って来る」と言い残し、
軽トラックで何処かに出かけて行ってしまった。

祖母に恐る恐る尋ねてみると、彼女曰く、
「 "八尺様"に魅入られてしまったようだよ。ジイちゃんが何とかしてくれる。
お前は何にも心配しなくていいから」と震えた声で言った。
それから祖母は、彼が戻って来るまでぽつりぽつりと話してくれた。


http://blog.cnobi.jp/v1/blog/user/7170818ba3679a9c8a30a9deff30364e/1315539996

この辺りには "八尺様" という厄介なモノがいるという。
"八尺様" は大きな女の姿をしていて、名前の通り八尺(約2.4m)ほどの背丈があり、
「ぼぼぼぼ....」と男の様な声で変な笑い方をする。
人によって、喪服を着た若い女だったり、留袖の老婆だったり、野良着姿の年増だったりと
見え方が違うが、女性で異常に背が高いことと頭に何か載せていること、
それに気味悪い笑い声は共通しているそうだ。
昔、旅人に憑いて来たという噂もあるが、定かではない。
この地区(今は○市の一部であるが、昔は×村、今で言う「大字」にあたる区分)に、
祀られた地蔵様によって封印されていて、よその土地へは行くことが無い。
そのモノ に魅入られると、数日のうちに取り殺されてしまう。
そして、最後に "八尺様" の被害が出たのは15年ほど前とのこと。

これは後から聞いたことですが、地蔵によって封印されているというのは、
"八尺様" がよそへ移動できる道というのは理由は分からないが限られていて、
その道の村境に地蔵を祀ったそうだ。
そのモノの移動を防ぐ為に、それは東西南北の境界に全部で4ヶ所あるらしい。
もっとも、何でそんなものを留めておくことになったかというと、
周辺の村と何らかの協定があったらしい。
例えば水利権を優先するとか。
そのモノの被害は数年から十数年に1度くらいなので、
昔の人はそこそこ有利な協定を結べれば良しと思ったのだろうか。

そんなことを聞いても、全然リアルに思えなかった。まぁ、当然だよね。
そのうち、祖父がある1人の老婆を連れて戻ってきた。


http://blog.cnobi.jp/v1/blog/user/7170818ba3679a9c8a30a9deff30364e/1315539941

「えらいことになったのう。今はこれを持ってなさい」
Kさんという老婆はそう言って、お札をくれた。
それから、Kさんは祖父と一緒に2階へ上がり、何やらやっていた。
祖母はそのまま俺と一緒にいて、トイレに行く時でも付いてきて、
トイレのドアを完全に閉めさせてくれないくらい、俺の存在を監視していた。
ここにきて初めて俺は「なんだかヤバイんじゃ....」と思うようになってきた。

しばらくして俺は2階に上がらされ、ある部屋に通された。
そこは窓が全部新聞紙で目張りされ、その上にお札が貼られており、
四隅には盛塩が置かれていた。
また、木でできた箱状のものがあり(祭壇などと呼べるものではない)、
その上に小さな仏像が乗っていた。
あと、どこから持ってきたのか「おまる」が2つも用意されていた。
ってゆうか、これで用を済ませろってことか.....

「もうすぐ日が暮れる。いいか、明日の朝までここから出てはいかん。
俺もバアさんもな、お前を呼ぶこともなければ、お前に話しかけることもない。
そうだな、明日朝の7時になるまでは絶対ここから出るな。
7時になったらお前から出ろ。家には連絡しておくから....」
と、祖父が真顔で言うものだから、俺は黙って頷く以外なかった。
続いてKさんからも、「今言われたことは良く守りなさい。お札も肌身離さずな。
何かが起きたら、仏様の前でお願いしなさい」と言われた。

テレビは見てもいいと言われていたので点けたが、何だか上の空で気も紛れない。
部屋に閉じ込められる時に、祖母がくれたおにぎりやお菓子も食べる気も起きず、
俺は布団に包まってひたすら震えていた。


http://blog.cnobi.jp/v1/blog/user/7170818ba3679a9c8a30a9deff30364e/1315540637

そんな状態でもいつの間にか眠っていた様で、たまたま目が覚めた時には、
付けっぱなしにしていたテレビにはある深夜番組が映っていて、
自分の時計を見たら、午前1時過ぎだった。

なんか嫌な時間に起きたなぁなんて思っていると、
窓ガラスをコツコツと叩く音が聞こえてきた。
それは、小石なんかをぶつけているんじゃなくて、手で軽く叩く様な音だったと思う。
風のせいでそんな音がでているのか、もしかして誰かが本当に叩いているのか、
その時の俺には判断がつかなかったが、必死に「これは風のせい」と思い込もうとした。
妙な戦慄に満ちた緊張感。
とりあえず、落ち着こうと俺はお茶を一口飲んでみるも、やっぱり怖くて、
テレビの音を大きくしてみた。

突然、祖父の声が聞こえてきた。
「おーい、大丈夫か。怖けりゃ無理せんでいいぞ」
俺は思わずドアに近づいたが、彼の言葉をすぐに思い出した。
 すると、また声がする。
「どうした、こっちに来てもええぞ」

 ....祖父の声に限りなく似ているけど、あれは祖父の声じゃない。
どうしてか分からんけど、そんな気がして、
そしてそう思ったと同時に全身に鳥肌が立った。
ふと、隅の盛り塩を見ると、それは上の方が黒く変色していた。

一目散に俺は仏像の前に座ると、Kさんのお札を握り締め、
「助けてください」と必死にお祈りをはじめた。
その時だ。
「ぽぽっぽ、ぽ、ぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽ................」

あの声が聞こえ、窓ガラスがトントン、トントンと鳴り出した。
そこまであのモノの背が高くないことは分かっていたも、
それが下から手を伸ばして窓ガラスを叩いている光景が頭の中に、
しきりに浮かんで仕方が無かった。
もう俺のできることは、仏像に祈ることだけだった。


http://blog.cnobi.jp/v1/blog/user/7170818ba3679a9c8a30a9deff30364e/1315541306

とてつもなく長い一夜に感じたが、それでも朝は来るもので、
付けっぱなしのテレビがいつの間にか朝のニュースをやっていた。
画面隅に表示される時間は確か午前7時13分となっていた。
ガラスを叩く音も、あの声も気づかないうちに止んでいる。
どうやら俺は眠ってしまったか、気を失ってしまったかしていたらしい。
しかし、不吉にも盛り塩はさらに黒く変色していた。

念のため、自分の時計を見たところ、テレビ画面の表示と同じ時刻だったので、
恐る恐るドアを開けると、そこには心配そうな顔をした祖母とKさんがいた。
祖母が、よかった、よかったと涙を流してくれた。

下に降りると、俺の親父も来ていた。
すると祖父が外から顔を出し、「早く車に乗れ」と俺を促しす。
庭に出てみると、何処から持ってきたのか、ワンボックスのバンが1台あった。
そして、庭に何人かの男たちがいた。

ワンボックスは9人乗りで、俺は中列の真ん中に座らされ、助手席にKさんが座り、
庭にいた男たちもすべて乗り込んだ。
全部で九人が乗り込んでおり、俺は八方を囲まれた形になっていた。

「お前、大変なことになったな。
チラチラと気になるかもしれないが、これからは目を閉じて下を向いていろ。
俺たちには何も見えんが、お前には見えてしまうだろうからな。
俺たちがいいと言うまでは我慢して、絶対に目を開けるなよっ!」
と、俺の右隣に座った50歳くらいの厳ついおじさんがそう言った。

祖父の運転する別の軽トラが先頭、次が自分が乗っているバン、
後に親父が運転する乗用車という車列で走り出した。
おそらく、時速20キロも出ていなかったんじゃあるまいか。
車列はかなりゆっくりとしたスピードで進んでいる様だった。

 間もなくKさんが、「ここがふんばりどころだ」と俺に呟くと、
何やら念仏を唱え始めた。

まただ。
「ぽぽっぽ、ぽ、ぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽ................」


http://blog.cnobi.jp/v1/blog/user/7170818ba3679a9c8a30a9deff30364e/1315541408

あの声が聞こえてきた。
俺はKさんからもらったお札を握り締め、言われたとおりに目を閉じ、
大人しく下を向いていたが、
何故かふいに薄目をあけて外を少しだけ見てしまった。

 目に入ったのは白っぽいワンピース。それが車に合わせ移動していた。
あの大股で付いてきているのか。
 頭は窓の外にあって見えない。
しかし、車内を覗き込もうとしたのか、そのモノは頭を下げる仕草を始めた。

俺は恐怖のあまり、無意識に「ヒッ!」と声を出す。
すると「見るな」と隣が声を荒げる。
 慌てて目をぎゅっと瞑り、さらに強くお札を握り締めた。

コツ、コツ、コツ。
ガラスを叩く音が始まる。

周りに乗っている者たちも短く「エッ」とか「ンン」とか声を出す。
そのモノは見えなくても、声は聞こえなくても、叩く音は聞こえてしまう様だ。
Kさんの念仏に力が入る。

やがて、そのモノの声と音が途切れたと思った時、
Kさんが「うまく抜けた!」と声をあげた。
それまで黙っていた周りを囲む男たちも「よかったなあ」と安堵の声を出した。


http://blog.cnobi.jp/v1/blog/user/7170818ba3679a9c8a30a9deff30364e/1315540389

やがて車は道の広い所で止り、俺は親父の車に移された。
祖父と親父が他の男たちに頭を下げている時、
Kさんが「お札を見せてみろ」と、俺に近寄ってきた。
無意識にまだ握り締めていたお札を見ると、全体が黒っぽくなっていた。
するとKさん曰く、
「....もう大丈夫だと思うがな、念のためしばらくの間はこれを持っていなさい」
と新しいお札をくれた。

その後、俺は親父と2人で自宅へ戻った。
バイクは後日、祖父と近所の人が届けてくれた。
親父も "八尺様" のことは知っていた様で、
子供の頃、友達のある1人が魅入られて命を落としたということを話してくれた。
あと、魅入られたために他の土地に移った人も知っているという。

バンに乗った男たちは、全て祖父の一族に関係がある人で、
つまりは極々薄いながらも、自分と血縁関係にある人たちなのだそうだ。
前を走った祖父、後ろを走った親父も当然血の繋がりはあるわけで、
少しでも俺から "八尺様" の目を誤魔化そうと、あの様なことをしたという。
親父の兄弟(伯父)は一晩でこちらに来られなかったため、
血縁は薄くてもすぐに集まる人に来てもらったそうだ。
それでも流石に7人もの男たちが今の今、というわけにはいかなく、
また、夜より昼の方が安全と思われたため、俺は一晩部屋に閉じ込められたとのこと。
道中、最悪なら祖父か親父が身代わりになる覚悟だったとか.....(感謝します)
そして、もうあそこには行かないようにと、強く、念を押された。

家に戻ってから、祖父と電話で話した時、
あの夜、俺に声をかけたかと聞いてみたところ、そんなことはしていないと断言された。
"八尺様" の被害には成人前の若い人間、それも子供が遭うことが多いという。
まだ子供や若年の人間が極度の不安な状態にある時、
身内の声であの様なことを言われれば、つい心を許してしまうのだろう。
やっぱりあれは....と思ったら、改めて背筋が寒くなった。


http://blog.cnobi.jp/v1/blog/user/7170818ba3679a9c8a30a9deff30364e/1315539874

それから10年経って、あのことも忘れがちになった時、
洒落にならない後日談ができてしまった。

「あのモノをを封じているお地蔵様が誰かに壊されてしまった。
それもお前の家に通じる道のものがな....」と、祖母から電話があった。
ちなみに、祖父は2年前に亡くなっていて、
当然ながら俺は葬式にも行かせてもらえなかった。
祖父も起き上がれなくなってからは絶対来させるなと言っていたという。

今となっては迷信だろうと自分自身に言い聞かせつつも、かなり心配な俺がいる。
あの奇妙な声が聞こえてきたらと思うと.....

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性別:
男性
誕生日:
1974/04/11
職業:
会社員
趣味:
単館系映画鑑賞、音楽や絵画鑑賞、そして絵を描くことと...
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