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ポテチの水彩絵の世界にようこそ! 気分でコメントや画像とか、恐いのや面白い毒ある話とか、 現実の花の色と違ったりとか、妙な感じです。
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「ああ、またか」
ドアノブに引っ掛けてあるビニール袋に入った花束を手に抱えて
玄関の鍵を開けた。
初めは薄気味悪く、ビクビクしていた俺だが、担当の編集者に
「そんなの、売れ初めは良くあることですよ」
と言われ、納得してからは慣れっこになってしまった。
どこから住所を調べたのか知らないが、ここまで熱烈なファンがいるとなると、
売れ始めたばかりの作家としては満更でもない。
カップラーメンを啜りながら、週一で連載しているエッセイの原稿を書き始める。
遅筆なので、何週分も前倒しに書きためておかないと
締め切りに間に合わなくなるのだ。
PCの前で考えあぐねること数十分。
……ネタが浮かばない。
困った俺の目に飛び込んできたのは例の花束。
仕方なく「奇妙な花束」というタイトルでキーボードを叩き始めた。
"1人暮らしで花の無い俺に毎日ありがとうございます。
 ただ花より団子の俺としては食べ物の方が良かったり(笑)"
よし、こんなもんでいいか。



1週間後、玄関の前には花の代わりに手作りらしき惣菜が置かれていた。
うわ、本当に作ってきたのか。
美味そうだけど毒とか入ってたら怖いなあ。
そこにちょうどやってきた担当に相談してみると、
彼は険しい顔つきになった。
「食べるおつもりですか? そんな怪しいもの」
「まあな。せっかくの好意を無駄にしたら悪いだろ。
 カップラーメンにもそろそろ飽きたしな」
「……それなら、僕に頼めばいいじゃないですか」
「えっ?」
「僕だって料理ぐらいできます」
拗ねた様に呟き、担当はおもむろに俺の手を握った。
な、なんだこの状況? 不覚にも胸がドキっと高鳴ってしまう。
すると突然、天井から見知らぬ女が落ちてきた。
「ちょっと、あんた! 何してんのよ〜!!
 ホモだなんてひどおおおおおおい!!!」
と泣き喚きながら部屋を出て行った。
俺はパニックになって、なぜか咄嗟に追いかけようとしたんだけど、
担当に止められた。
「あんな寂しいストーカーになんて構わないでください。
 あなたは私と原稿のことだけ考えていれはいいんですよ……先生」
と抱きしめられて……後は身を任せるしかなかった。

それ以来、花束が置かれることはなくなり、
担当とも平和に仲良く暮らしてます。


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大学時代、アメフト部の友人から、
「うちに遊びに来ない?」と電話がかかった。
声を聞くのは半年ぶり、実際に会うとなれば1年ぶりになるのだなあと、
俺は仕事明けのぼんやりした頭で話半分に聞いていたら、
いつの間にか、2週間後の週末を彼の家で過ごすということになっていた。

当日は急な仕事が入ってしまい、
夜、仕事が終わるとそのまま彼の家へ向かった。
着いてすぐに手料理を振舞われ、
彼の仕事の愚痴を聞き、俺の愚痴を聞いてもらい、
土産にと持ってきた酒やつまみを空けきるころには日付を越えてしまっていた。

それではもう寝よう、と俺は気分よく横になり瞼を閉じたのだが、
落ち着かない様子で寝返りを打つ彼が気になってうまく眠れない。
「どうしたのか?」と聞けば、
「実は言ってなかったことがあるんだ」と気まずげな様子で彼が言う。
「2週間前からなんだけど、手首が出るんだよ」
よく分からない、と俺は首を傾げると、
彼は少し離れた位置のベッドの真正面にあるクローゼットを指差した。
「1番初めは、クローゼットの隙間から指らしき影が出ていたんだ。
 その時はただの見間違いだろうと思って、気にしなかったんだけどな。
 でも次の日、今度は本棚の影に男の指を見つけて、
 また次の日はテーブルの横に手が見えたんだ」と彼は言った。
言われた通りの順に目線を動かしていけば、その "手" は、
明らかにベッドを目指して移動している。
俺は実際に見たわけでもないのに、背筋に悪寒が走った。



「それでさ」と強張った顔で彼は言う。
「昨日はついに、ベッドの縁に手首があったんだよ。
 だから……もしかしたら、今日、何か起こるかもしれない」
力なく続けられた言葉に色々と思うところが無いではないけれど、
それが示すサインの様なものに、結局何も言えなくなってしまった。

そのまましばらく俺が無言でいると、彼は急に笑い出して、
「嘘だよ」と言った。
「誰か泊まりに来た時に、驚かそうと思って考えた話なんだ」
怖かった? と笑う彼はとても楽しそうだったので、俺は少し困ってしまった。
実は俺も、先ほどから彼に言えていないことがあったのだ。
彼がその "手" の話を始めた時、
彼の背後をとる様に座りこんでいた男の影がしだいに前へと傾ぎ始め、
話が終わる頃には彼に覆いかぶさり、
それからずっと、ぎらついた目で彼の笑う顔を凝視し続けているのだけれど、
果たしてそれを告げるべきなのか、どうか。

俺はゆっくりと布団の中にもぐり込み、何も見えない様に固く瞼を閉ざした。
やがて、友人の微かな喘ぎ声と、聞き慣れない男の低い声が、
いつの間にか降りだした雨の音に紛れて聞こえ始めた。





自分の身に起こった今でも信じられない実話です。
まだ僕が中学3年だった頃、父と母とまだ小学校低学年の弟の4人家族でした。
次の進学する高校は早々に決まり、
受験勉強をしなくてもよくなった僕はのんびりしてました。

その年の大晦日、NHK紅白歌合戦を見終わって、
ゆく年くる年のいろいろな地域の神社や寺の中継を見つつ、
「もうすぐ新年か〜、明けたら初夢でも見るかな……」
と寝たのはよかったのですが、
真夜中に頭を思いっきり殴られる悪夢をみて、突然真夜中に起きました。
誰にやられたとかの具体的な経緯や内容はさっぱり覚えてないのですが、
心臓は音が聞こえるほど、激しく脈打っていて、
脂汗を全身にじんわりかき、まるで冷や水を背中から流されたかの様に、
布団からがばっと起きた体勢のまま、僕は硬直してました。
「新年早々に悪夢かよ……最悪だな」
と思いながら、カラカラに渇いた喉を潤すために、
冷蔵庫のあるリビングに行くことに。
すると、もうかなりな真夜中なはずのに、
父と母と弟が抱き合った格好でテレビの前に座っていました。
テレビは付けっぱなしで、ニュース番組らしき画面が映っていました。
しかも無声で……
それに窓という窓が全部開けっ放しになっていて、
外と変わらないほど寒いんです。
明らかに様子が変でした。ぞっとする寒気を感じました。

「ちょっと、こんな夜中に何やってんの!」
あまりの尋常でない雰囲気に僕は少し震えながら、半ばキレた様に怒鳴ると、
「あ、兄ちゃん。だって…ぁ…(声が小さくて聞き取れない)」
と弟は言うと泣き出してしまい、
それを見た両親は、終始無言のまま無表情で窓を全部閉め、テレビを消し、
うずくまって泣いている弟を寝室に連れて行きました。
新年早々、気味が悪すぎる出来事に遭遇しまくったせいか、
全く寝る気が起きないので、
その日は自分の部屋で、漫画を読みながら朝を迎えました。

 

朝になって、両親に「ちょっと、真夜中に......何やってたの?」と聞くと、
母 「はぁ?? 何いってるのよ。それより、新年のご挨拶が先でしょ」
父 「お前、新年早々、寝ぼけてんのか?」といつもと同じ感じな返答。
昨夜の奇怪な印象とのギャップで僕はかなりパニクりました。
まあ、そんな話を友だちにしても疑われるだけだし、
付き合っていた元家庭教師だった彼女があまりにもな感じに我慢できなくて、
12月に振ってしまったのもあって、
きっと精神的な疲れから幻覚を見たんだろう……と落ち着かせました。

それからしばらくして、また真夜中に悪夢で目が覚めました。
今度は、微妙に内容を覚えていて、見知らぬ人に後頭部を殴られる夢です。
なぜか起きてもジンジンとつむじ辺りが痛いんです。
そして、なぜか「コンビニなら安全」などと意味不明なことを考えてました。
僕の頭の中は「家族を装った化け物の類いか何かに遭遇したもの」
という考えが支配してて、パニクってリビングに逃げたのですが、
誰もいないし、焼肉のせいか、焦げた肉の臭いが今だ浮遊してて、
しかも新年早々にあった奇怪な出来事を思い出し、
またもや眠れぬ夜を過ごしました。

それから、2月の上旬になると、体が異常に痒くなってきました。
最初は単なる乾燥肌と思ってましたが、
背中と頭が特に焼ける様な感覚が常となり、
ボリボリと掻きむしっていました。
一向に良くならず、近所の皮膚科に行って塗り薬をもらい、
風呂上りに薬を塗ろうとすると、
弟が「塗らせて〜」と懇願するので背中を突き出してやると、
何を思ったのか、バチーン! と背中に張り手を食らわしたので、
痛さのあまり「痛い! ふざけんなー」と怒りを露にしました。
必ず僕の怒鳴り声に反応して泣く弟。
今も弟は見る見るうちに目に涙をためて、
「あぁ、こいつ、大声で泣くぞ泣くぞ」
と思ってると、案の定、涙をポロポロ流しました。
しかし妙なことに、いつもは真っ赤になる弟の顔は色味を失った様に青ざめ、
ついには無表情でさめざめと涙だけを流すだけといった感じでした。
「な、なんだよ…… いつもみたいにギャーとか、ピーとか泣かないのかよ……」
何かが違う雰囲気にただ気持ち悪くて、振り返ると両親がいました。
声をかけようとすると、両親も無表情で涙を流してます。
もう完全に放心状態。
よく見ると、口元が微妙に動いて何かを言っているのですが、分かりません。
その瞬間、自分の居る景色が真っ赤になりました。
赤にとけ込んで見えなくなる父と母、そして弟。
徐々に色あせてセピア色になって意識が……なくなる……と思ったら、
またいきなり景色が一変してました。



……どっかで見覚えある様な……と思ったら従兄弟の家でした。
深刻そうに、父の弟である叔父が俺の顔を覗いています。
「あれ…… 何でここに居るんだろう??」全然事態が飲み込めません。
そのうち、ぞろぞろと僕を囲む様に人が集まってきました。
最初は「今までのは全部夢だったのか??」と推測してましたが、
叔父の家にいる経緯が全く分からないし、何故か、祖父母もいるし、
僕の身体にはあちこち包帯が巻かれ、完全にパニック。

「気がついたのか。ふう。良かった。
 戻ってこないんじゃないかとヒヤヒヤしたぞ」
叔父が少し微笑んでいます。
「記憶がないならないほうがいいんじゃないか」と祖父が言っています。
「こいつには何があったのか、話しておかんとならんでしょう。
 まだ犯人も捕まってないし、1週間後にまた警察の人が来るだろうから……」
それから、叔父から全貌を聞いた。

僕の家族は1月1日に何者かの放火にあって全焼した様です。
僕はたまたまコンビニに行っていたので、助かったのですが、
家のすぐ近くで犯人と思われる人を見たために、後頭部を殴られ、
全身をバットかなんかでめった打ちにされて、記憶を失ってしまった様です。
搬送先の病院でずっと生死を彷徨った後、
回復してから叔父の家に引き取られたとのこと。
そして今は桃の花がほころぶ3月。
2ヶ月も記憶を失ったまま、リハビリを続け、たった今、
記憶が戻ったとのことでした。

僕は号泣しました。
いっぺんに大切なものを失ったのを、2ヶ月も過ぎてから分かったのですから。
ただただ泣きじゃくる僕の顔を、祖父母と叔父が見つめていました。
叔父は黙って目を反らしていましたが、
祖父母たちももらい泣きして、わんわん泣き続けていました。
改めて見直すと、僕の体中には青あざが無数にあり、
包帯がミイラの如く巻いてあり、
節々が曲げるたびに痛みが走りました。
何故か、真冬の真夜中に全部の窓が開いてあったこと。
ガソリン臭いリビング。無表情で固まりあう家族。元彼女に殴られる悪夢。
突然真っ赤になった景色……
まるでジグソーパズルの様に謎がピシピシとはまっていきました。

結局、元彼女はいまだに捕まっていません。
たぶん、どこかでひっそりと死んでいる様な気がします。
そして、背中の包帯を取った時に僕の青あざが残る背中には、
弟の手のひら状に無傷だった跡がありました。
事件から5年経ち、あざが消えるのと共に、
その手のひらの跡も消えてしまいした。



 

「きっかけをくれたと言えば、アレだな。黒いソファー」
インターネットで知り合い、週末に逢ってホテルに泊まり、一戦交わった後、
汗で濡れた背中を晒しながら彼はそう言った。
「黒いソファーがきっかけ? なんだそれ??」
ベッドの端に座って釘を用意しながら煙草を吸う俺はそう問うと、
彼がすり寄ってこんな話をし始めた。



僕は高校生の時、
親元を離れて家賃2万の風呂無しアパートを借りて住んでいた。
その部屋には何故か黒いソファーが備え付けてあった。
6畳の部屋には似合わない本皮のどっしりとした大きなソファーで、
大家のおじいさんが言うには、前の前の前くらいの住人が
「いらないので」と置いていったとのこと。
住人が引っ越す度に「持って行けよ」と言うのだが、
「いや、いらないです」と断られるらしい。

それを聞いた自分は、
「うわお! オカルト話でよくあるやつ!」なんて思ったものの、
貧乏でテーブルしか持っていなかったので、
ありがたくベッド代わりに使わせてもらうことに。
ソファーは左側の壁にピタリと寄せて置いてあり、
動かそうにも1人ではビクともしなかった。

住み始めて数日経った夜、
ソファーで寝ていると突然背中に痛みを感じた。
チクチクと尖った何かで刺されてる様な痛み。
何か虫? と思いながら体を起こし電気をつけて
ソファーやシャツを確認してみたものの、
何も見当たらず、そのうち痛みもなくなった。

その日から不思議なことが起こる様になった。
背中のチクチクが下半身までに及び、
金縛り、気味の悪い息づかいとうめき声、
あとヌメヌメとした黒い影が部屋に入って覆い被さるとか、
誰かが背中に顔をベタリと付けてくるとか、
包丁で刺されてから黒い影に抱かれる夢を見るとか、
起きると必ず夢精してるとか……
全てソファーで寝ている時に起こる。
「やっぱりこのソファー……」と思い、
引越しや処分することを考えたものの、
ひとりじゃ運べないし、そんな金があるわけもなく、
仕方なくソファーに布をかけ、
なるべくソファーに近づかない様に生活をしていた。

ある朝、便所に行こうと廊下へ出ると、大家さんと彼の孫と出くわした。
「あ、おはようございます。あれ? どうしたんですか?」
「おお、前原さん(僕)、おはようございます。
 いやあ、隣の加藤さんから急に電話がきてね。
 もうアパートに戻らないから片付けてくれだっていうのよ」
自分はそれを聞いて思わずガッツポーズをしそうになった。
何故ならこの隣の加藤さん、かなりアレな人だったからだ。
40歳後半くらいの眼鏡で、"定子" みたいな長髪ストレートでずんぐりした感じで、
もう10年以上住んでいるらしいんだけど、
挨拶も無し、少し物音をたてただけで壁をドン!、
あげくの果てにはドアに「うるさい!」「掃除!」と
書かれた張り紙をしてくるなど酷かったからだ。

1番鮮明に覚えているのが、廊下ですれ違った加藤さんが突然ひっくり返った。
偶然近くにいた自分が「大丈夫ですか?!」と駆け寄り、
手を差し伸べるとバチーンとすごい勢いで弾かれた。
「なんだ?!」とビックリしながら見守っていると、
近くにコンビニの袋が落ちているのに気付いた。
何の気なしに拾ってみるとエロ漫画とコンドームが入っていた。
すると凄い勢いで奪い取ると、加藤さんはドシドシと部屋に戻っていった。
そんな人だったので「引っ越してくれてありがとう!」と心から感謝していた。
鼻歌交りに部屋に戻りダラダラしていると、隣が何やら騒がしい。
何かあったのかな? なんて思っていると、
「前原さん! ちょっと見に来てって!」と大家さんの孫が呼ぶ声が聞こえた。
「どうしたんですか?」と隣の部屋に行くと、
大家さんの孫が血相を変えてどこかを指差している。
パッと指差した方を見て、めちゃくちゃビックリした。
壁に釘が何十本も刺してあった。

呆然と見ていると大家さんが「よく見てみろ。色々書いてある」と言うので、
近寄って見てみると、釘が刺してあるところを中心にして、
壁中に殴り書きにされた細かい文字と汚い絵がたくさんあった。
絵は小学生が描いた様な女と男の裸のHな絵で、
上から爪か何かで引っ掻いた跡が。
細かい字の方は「死」とか「呪」とか「殺」とか……
いかにもな字が並んでいた。
「○○死ね」というが沢山あって、もちろん僕の名前もあったのだが
大家さんが言うには「君の前の住人たちの名前があるな」と。
それを見て僕は何となく気付いた。
この壁の向こうって、ちょうどソファーがあるあたりじゃないの……と。



「うわお! 今思えばずいぶんとエグい話だな。
 やっぱり、あの現象ってソファーが原因だったんじゃなくて、
 病的なまでなモヤモヤのせいだったりするのかな」
「きっと、そう。恐らく、前の住人たちはそんな事実を知らないで、
 ソファーに原因があるとみて置いていったんだろうなってね。
 その夜、そのソファーで寝たけど何もなかったから、そう確信したよ。
 まあ、それがきっかけかな。彼女のドス黒い情念というか、衝動というか、
 それに当てられた僕のセクシャリティーが確定したのは。
 元々、まわりの男子と違って女性には何も感じなくて、
 普通じゃないと思い悩んでた時期だったんだけど、はっきりしちゃったんだよ。
 僕はこっちが好いってね」
「……きっかけね。そして、今日に至るってか。 
 しかしな、さっきから隣人を女だって勝手に思い込んでるみたいだけど、
 それ、俺だから」





僕のクラスに新しく転入してきた、ポチャとした男の子。
彼はいつも机に突っ伏して塞ぎ込んでいて、未だに友人はいない様。
きっとクラスに馴染めずに大変なんだと考えた僕は、
意を決して彼に話しかけることに。
「君、いつも浮かない顔をしているね。何か嫌なことでもあったの?」
僕の突然の問いかけに彼は動揺した様だったが、
やがて重い口を開いて話しだした。
彼の話によると、自分が塞ぎ込んでいる原因は、
転入してくる以前の1ヵ月ほど前の出来事にあるという。
彼は当時、住んでいた家の自分の部屋でゲームなどをして過ごしていたが、
ふと気付くと、彼の部屋の天井板が少しずれているのを見つけたという。

彼は椅子を使って天井を這い上がると、
懐中電灯で辺りを照らして原因を探したそうだ。
天井の上は意外にも広々とした空間になっていて、
何処までも先が続いている様に見えた。
彼は天井が外れた原因探しよりも、
冒険心から天井裏をどんどんと先に進んで行った。
すると電池が切れたのか、突如として電灯の明かりが消え、
辺りは一面の闇となった。
彼は怖くなって部屋に戻ろうとするも、あまりにも進みすぎたせいか、
元いた部屋の明かりは既に見えなくなっていて、
彼は天井裏で完全に迷子になってしまった。
途方に暮れた彼は、元の部屋を探して歩き回ったが、
闇の中で方向感覚を失い、
しだいに自分がどの方向に向かっているのかも分からなくなった。
そのまま宛も無く歩き回るうち、
彼はだいぶ先に何か光りを放っているものを見つけた。
それを自分の部屋の明かりと考えた彼は、
夢中になって、その明かりに向かって歩き続けた。
しかし、段々と近づくうちに、明かりの正体は、
自分の部屋の明かりではないことが分かった。
それは何と、見たことも無い街の明かりであったと言う。
不思議なことに、天井裏に1つの大きな街があり、
その明かりが遠くから見えていたのだ。
彼は宛も無いので、その街の中に勇気を出して入って行ったとのこと。



そこまで話をすると、彼はため息をついて、しだいにボロボロと涙を落とした。
僕は突然の彼の涙に戸惑いつつも、
とりあえず彼を慰めようと、彼に言葉をかけた。
「大変だったね。でも、結局は部屋に戻れたんだろ。泣くことは無いよ」
すると彼はゆっくりと首を振って、こう答えた。

「まだ、その街から出られていないんだ」





プロフィール
HN:
ポテチ/ラダ
年齢:
50
性別:
男性
誕生日:
1974/04/11
職業:
会社員
趣味:
単館系映画鑑賞、音楽や絵画鑑賞、そして絵を描くことと...
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