ポテチの水彩絵の世界にようこそ!
気分でコメントや画像とか、恐いのや面白い毒ある話とか、
現実の花の色と違ったりとか、妙な感じです。
ある日、アパートに住む俺の部屋に隣人のおばさんが訪ねてきた。
「今日から3日間、主人と福島へ旅行に行きますの。
その間なんですが、家で飼っている猫のロビンちゃん。知ってるでしょう?
この子の世話をしてもらえないでしょうか?」
と頼まれた。
隣の部屋に猫がいたんだーと思いつつ、
どうせ今は無職で暇だし、何より俺は猫が大好きなのでそれを引き受けた。
「それでは3日間、よろしくお願いします」と猫の入った段ボール箱を手渡された。
「よーし! 今日から3日間可愛がってやるからなー」
俺はダンボール箱を開けると、中に入っていたのは猫の死骸だった。
ヤベっ、俺何かしたか!? これは実にマズい状況だ....
俺はしばらく考え込んでからペットショップに向かった。
あの猫と似た様な猫を買ってすり替えれば良いと考えたからだ。
ペットショップに行くと俺は驚愕した。
あの猫とまったく同じ柄で体の大きさもほとんど同じ、
似ているというより瓜二つと言っていい猫を発見したからだ。
これなら気づかれることは、断じて無いだろうと、俺はホッとした。
3日後、旅行から帰ったおばさんに猫を渡した。
これだけそっくりなんだ、気づかれる筈は無い! そう思っていたが、
「まあ、ちょっと! これロビンちゃんじゃないわよ!どうなってるのよ!」
おばさんは激怒した。
どうしてだ!? どうして気付かれたんだ? 柄も大きさも瓜二つなのに!
「こんなもので私は騙されませんよ! だって家の猫は....」
どう見てもあの猫と同じ見た目なのに、内面の違いとか?
ああ、どうしてバレてしまったのだろう。これは実に....
独り暮らし始めてずいぶん経つけど、最近初めてストーカー被害に遭ってる俺。
というのも、毎日毎日郵便ポスト(と言っても単身者用の安アパートだから、
ドアに穴が開いてて内側にボックスが付いてるだけの簡易なやつなんだけど)に、
手紙が入ってる。
無記名で宛名もないから、その者に部屋がバレてるってことだ。
手紙の内容も、最初のうちは「一目惚れしました」とか「好きです」とか、
その程度だったのだけど、段々エスカレートしていく内容。
最近は「なんで僕の気持ちに答えてくれないんだ」って逆ギレしてる状態。
こちらとして身に覚えがあるとすれば、ある場所で何人かと遊んだけれど、
お互い肉体での結びつき以上は踏み込まないのは暗黙の了解というか、その程度。
そして今日。
帰宅して、PC付けて、一息ついて、さて今日も例の手紙が来てるのかなーと、
憂鬱な気分で郵便ポストのボックスを開けてみた。
そしたら、手紙と一緒に、猫の首が入ってる。
しかも、俺が毎日帰り道に見かける隣人が可愛がってる猫。
これって俺がネコだからという当てつけ? 全く洒落にもならない。
手紙だけならまだ我慢できたけど、これはちょっとヤバ過ぎ。
これ以上、エスカレートしたら俺も危ない目に遭うかも。
明日、仕事を午後からにして警察に相談しよう。
戸締りもしっかりしなきゃいけないな。
深夜、2階で眠っていた俺は、階下の妙な物音に気付いてふと目が覚めた。
「玄関から誰か入って来た.....?」
そう思った瞬間、バクバクと鼓動が早まった。
夕方見たニュースが頭をよぎる。
(殺人犯、近辺に潜伏中か? 捜査大詰め段階)
急に脇の下に冷たい汗が流れるのを感じた。
幸い、侵入者はまだ1階にいるらしい。
「早く逃げなきゃ!」
恐怖のために固まった体を必死で動かし、物音を立てないように
俺は静かに窓辺へと向かった。
忍び足で階段を登ってくる気配がする。
侵入者はもうすぐそこまで迫っているのだ。
俺は窓から屋根に降り、ジリジリと遠ざかる。
屋根の縁に手を着き、庭へ足が届いた時、
真上にある私の部屋の電気がパッと付いた。
「ヤバい!」
俺はもう無我夢中で庭を抜け、夜の街を走った。
あの時、逃げるのが少し遅れていたらと思うと、今だに背筋が寒くなる思いだ。
少なくとも今のこの生活はなかっただろう。
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あるところに美しい姉妹がおりました。
その妹は姉を大変慕っておりましたが、姉は町の者たちから口々にいつも
「あそこの姉妹は揃って美しい」と言われることを疎んじていました。
姉は、自分だけが美しいと言われたかったからです。
ある日、
姉は決意して向かい森に住む魔法使いの男のもとへと会いに行きました。
そこでこんなお願いをしました。
「妹を男にしてください。彼女が女の運命から逃れられるように。変わりに...」
魔法使いに抱かれた後、願いは叶えられ、美しい青年に変えられた妹。
姉が家路に着くと「これで姉さんを守ってあげられる」と、
妹だった彼が喜んでおりました。
これで全てがうまくいった様に見えましたが、
今度は「あそこの姉弟は揃って美しい」と言われるようになり、
姉はそれにも我慢が出来なくなっていきました。
ある日、
姉は再び魔法使いの男に会いに行き、
「弟を馬にしてください。人の苦しみから逃れられるように」とお願いをし、
衣服を脱いで淫らなポーズをとりました。
再び願いは叶えられ、毛並みの豊かな白馬に変えられた弟。
これで本当に全てがうまくいった様に見えましたが、
今度は「あそこの娘と馬が一緒にいるのは美しい」と言われるようになり、
姉はそれにも我慢が出来なくなっていきました。
ある日、
姉は再び魔法使いの男に会いに行き、
「馬を木にしてください。長く安らかに生きられるように」
とお願いをしました。
魔法使いやその仲間の男たちと淫らな夜を過ごした後、
再び願いは叶えられ、馬は木になり、
家の庭で美しい花を咲かせておりました。
夜毎に風に吹かれて木の枝が揺れながら、「姉さん、姉さん」と囁く。
これで完全にうまくいった様に見えましたが、
「あそこの娘が木のそばにいるとまるで1枚の美しい絵のようだ」
と言われるようになり、
姉は、やはり自分だけに向けた称賛の言葉が得られないことが
嫌でたまらないのでした。
ある満月の夜、
姉は悪魔と化した魔法使いの男に、
「妹を石にしてください」とお願いをしました。
世にも醜悪な姿の悪魔は姉を抱き寄せ、
貪る様な口づけを交わしました。
すると元々妹であった木は大理石になり、
姉は地獄へと堕ちるのでした。
姉は妹でできた墓標の下にて、
「なんと美しい石だろう」と通りがかる町の者たちが口にするのを
永遠に聞き続けることに。
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とある戦争にて、制圧された部隊が捕虜となり、
即刻、全員に斬首刑が言い渡された。
捕虜なる上官は敵兵に部下の命乞いをこう申し出た。
「私は殺されてもいい。
だが、首を切られた後、私は自分の首を持って部下たちの前を走りぬける。
そこで走りぬけられただけの人数は助けて欲しい」
願いは受け入れられ、彼の部下たちは横一列に並ばされた。
斬首された上官は自らの首を持ち、部下全員の前を駆け抜け、
部下たちは開放された。
ある侍の男が打ち首に決まった。
縄を打たれ、首切り役が横に控えているというのに、
男は、ここまで追い込んだ相手に呪詛の言葉をはき続けていた。
首切り役の彼は男の目の前で涼しい顔。そしてこう言った。
「それほど御前の恨みがマコトなら、
首を飛ばされた時に、あの石に噛り付いてみせよ。それを証としよう」
指指す先(10メートル程)の石を睨みつけた男はそれを承知した。
果たして、切られた瞬間に飛んで石に齧り付くであろうこの恐ろしき形相の
男の首に恐れを抱いた者たちは、
「何故あのようなことを仰った?
恨みが本当になり、災いが降りかかったら何とします?」と、不安げに問いただす。
首切り役の彼は涼しい顔。そしてこう言った。
「あの男の恨みの気持ちは本物だった。
そのまま打ち首にしていたら確かに災いが降りかかったであろう。
だが、切られる時にあの男 ”石に齧りつく” ことだけに気持ちを込めていた。
よって、災いを成すことに振り向ける力はもはや残っておらぬだろう」
結果、その通りになったとのこと。
時は19世紀のヨーロッパ、数々の犯罪を犯した男が捕まった。
その男は確かに数々の犯罪を犯していたし、
その中には、あまりの惨さに聞いてしまったら吐き気をもよおすのもある。
だが、その男には病気の妻と子供がおり、
しかも、自分自身も仕事が出来ないような病弱な体だった。
だから犯罪に走るのも仕方なかったかもしれない。
かといえ、そんな理由で罪は軽くなるはずがない。
少なくとも当時はそうだった。
彼は、見せ物さながらのギロチンによる斬首刑の判決を下された。
そんな時、ある科学者が罪人なる男に取り引きを持ち掛けた。
「私は今、とある研究をしている。
その一環として、人間が首だけでどれだけ生きられるのかが知りたい。
君がギロチンに架けられ、首だけになったら、私の質問に答えて欲しい。
もし喋られなかったら、"YES" が瞬き1回、"NO" が瞬き2回で反応してくれ。
その代わりの条件として、その後の君の家族を保証しよう」
と言う内容だった。
彼はどうせ自分は死ぬ身、その後の家族が安泰なら、そんなことはお安い御用だ。
と、その取り引きに応じた。
その後、刑は執行され、ストンと軽快な音と共に、彼の首は飛んだ。
辺り一面に彼の鮮血が模様を描く。
科学者は、すぐさま彼に、正確には彼の首に近寄って質問した。
「君、意識はありますか?」
瞬き1回。
観衆が悲鳴を上げた。
科学者は構わず質問を続けた。
「痛覚はあるか?」
瞬き2回。
そして最後の質問。
「目は見えるのか?」
だが、もう彼は反応しなかった。
「嗚呼、これが1番知りたかったのに残念。次の者に聞くとしよう」
俺はほぼ毎日、夜になると彼女のマンションに通っていた。
俺はチャイムを鳴らさずドアをコンコココン♪って感じで、
バイクのヘルメットでノックして開けてもらってた。
俺たちだけの合図だって言って。
ある日の晩、彼女が泣きながら電話してきた。
なんかパトカーのサイレンの音も聞こえる。
その日、たまたま俺は他の彼女のところに行ってたので、
この彼女の家に行かなかったんだけど、
いつもの様にコンコココン♪ってノックされたから
俺だと思って開けたら知らない男が全裸で立ってたんだって。
無言で部屋に入って、いきなり彼女は腹を殴られ、
今日からここに住むからとか、わけの分からないことを言いながら、
手首に付けた手錠のもう片方を彼女に嵌めようとカチャカチャさせてる隙に、
彼女は這いずって逃げたらしい。
それで、隣の部屋の住人に助けを求めた時に思い出したんだ。
侵入してきた男は隣の奴だ!って。
その時、たまたまエレベーターで帰ってきた同じ階の夫婦に助けを求めたので、
一応最悪の事態は避けれたとのこと。
隣に住んでた男は、俺たちのドアの合図に気付いてそれを真似したんだろう。
前金払っていればこうはならなかったのに、
なんともバカな男だ。
気分転換に外へ煙草を買いにマンションの玄関を出た時、
「キャー!」という女性の悲鳴が聞こえた。
僕は驚いてそこに行ってみると、道路で女性が
縦2m・横2m・厚さ50cm程の鉄板らしき物の前に座りこんでいた。
その女性に話を聞こうとしたが、ビックリしたのか話せない。
すぐに作業服を着た人が来て訳を話してくれた。
どうやら、ビルの上で工事をしている時に落としてしまったという。
幸い怪我人は出なく、女性は驚いて腰が抜けてしまっただけらしい。
それにしても、赤いタイルの上に真っ黒の鉄板とは不気味である。
コンビニで煙草とウォッカを買った後に、
もう1度その場所に寄ってみた。
その鉄板らしき物はまだ残っていた。
とても重いので、すぐには処理ができないのだろう。
危ないからか、近づけないように警備員が配備されていた。
先ほどの女性もまだいたので声をかけてみた。
「先ほどは驚かれたことでしょうね」
「ええ、驚きました。悲鳴を聞いた時はビックリしました」
昔、公園で友だち4人とかくれんぼをした。
かなり広い公園で隠れるには困らないけど、問題は鬼になった時。
只でさえ広くて大変なのに、友だち4人とも隠れ上手。
鬼には絶対なりたくなかった。
ジャンケンに勝ち、なんとか鬼を免れた僕は、
ケンちゃんと一緒に公衆トイレの屋根の上に隠れた。
「みんなどこに隠れたのかな」
「さあ、みんな隠れるの上手いからな」
「でもマオちゃんは身体が大きいから、
ショウ君たちより先に見つかっちゃうかもね」
僕たちは息を殺して、そこに隠れていた。
どのくらい時間が経った頃だろうか。
ケンちゃんが「トイレ行ってくる」と、僕に小さな声で言ってきた。
見つかるからと止めたけど、我慢出来なかったのか、
ケンちゃんは下に降りて行ってしまった。
その時、「みつけた」と声が聞こえた。
どうやらケンちゃんが、鬼に見つかってしまったらしい。
その日から鬼はケンちゃんの両親になった。
僕の趣味は真夜中の散歩。
澄みきった冷たい空気の中、今日もゆっくり歩き続ける。
街灯もない夜道は真っ暗でほとんど見えないけれど、
毎日歩いている道だし、真っ暗にも慣れたので平気だ。
ふと見上げると、開けた窓から幼い感じの女の子が顔を覗かせている。
明るい部屋の逆光で、顔はよく見えない。
僕が軽く手を振ると、彼女はコクリっと頷いて、手を振り返してくれた。
何となく嬉しくなって、僕は歩く足を速めた。
窓の光の漏れる位置に差し掛かったところで、
僕はもう一度振り返って窓を見上げた。
彼女の姿はもう見えなくなっていて、ガッカリしたのだけれど、
次の日は、もっとガッカリすることに。
高校は離れたんだけど、彼は近所の友だち。
とはいえ、母親同士が同じ工場でパートをしているくらいで、
実はあまり付き合いはない。
その彼が入院したというので、母に促され、見舞いに行った。
何で入院したのか知らないんだけど、行ったら寝てた。(そりゃ、そうか)
枕元には千羽もない百羽位の折り鶴が吊ってあった。
ちょっと触れてみると『クラス一同より』って書いてあった。
(律儀なクラスメイトじゃん)
すると何故か鶴が2つ落ちた。
(うわっ縁起悪いかも、ごめん!)
慌てて拾ったら、彼が目を開けた。
俺に気付いたみたいで、そのまま他愛ない話して帰宅した。
彼が入れたのか、ポケットにはさっきの落ちた折り鶴2つが入ってた。
何となく広げてみると、折り紙の裏に
2つとも『死ね』と大きく書いてあった。
ある有名な心霊スポットへ愚かにも深夜に車で行ってみたんです。
トンネルを抜けると、そこが有名な心霊スポット。
するとそこに目の前にふっと女の人の白い影が。
「あっ、幽霊!」と思って、慌ててブレーキを踏んで降りてみたところ、
そこに人影はなく、目の前は崖。
ガードレールが壊れていて、
ブレーキを踏んでなかったら落ちてしまっていたかもしれない。
「きっとあの幽霊は助けてくれたんだ」
そう思って、そこで手を合わせ、お祈りして、
正気に戻った僕は家に帰ることにした。
トンネルを引き返す途中、ふとミラーを見ると、
後部座席に先ほど目の前を横切った女の人の姿が。
その女の人は、こう呟いた。
「......死ねばよかったのに」
「いや、でもホント助かったよ。ありがと」
「バ....バカっ! あんたなんか死んじゃえばよかったのよ!」
「お礼しないとな。また来週きてもいいかな」
「ダ、ダメっ! また落ちそうになったら危ないわゎ!!!」
翌週、彼女はお弁当を用意して待っててくれました。
彼女曰く、作りすぎただけで、
決して僕のために用意したんじゃないそうです。
先程まで私の上に乗っかっていた衛兵の男がそそくさと部屋を出る時、
暖炉の上に置いていたガラスの靴を落としていった。
それから二度寝してようやく起きた遅い朝、
私は床に割れて散らばったその破片を片付けようとみていたら、
ふいに昔を思い出した。
父が亡くなったとたんに豹変した継母と連れ子の姉たち。
あの魔女に出会って、虐げられて下女の様な暮らしから一転、
この国の王子であった今の夫に見初められたのは、
もう10年前だったかしら。
私にとって大きな転機の象徴といえるガラスの靴。
壊れてしまったのはある意味、成るべくしてそう成った、
そんな気がする。
王室に迎えられてからは毎日が輝いていたわ。
貴族でもない私を温かく見守ってくれる寛大な王様と義母様。
そして愛してくれた夫。
でもそれはほんのつかの間。
娘を身籠ってからというもの、彼は身重になった私を避けるかの様に
毎晩、寝室から抜け出しては
他の女たちの部屋に入り浸って腰を振っている始末。
これこそ、現実。夢から呼び覚ませてくれてありがとうって感じね。
自分でいうのもナンだけど、
私は周りの女と比べたら顔の美貌は引けを取らないと自負している。
そんな私と "この国一番の美声年" と謳われた彼の子供だもの。
可愛くないわけがないわ。
娘が生まれてから他の女との浮気はなくなったけど、
私のところに戻ってきたわけではない。
娘に全ての愛情を注ぐべく、いつもベッタリ。
始めはそれが可愛いと思ってたけど、
どんどんエスカレートしていく彼の情熱。
ある日、見てしまったの。そして悟った。
あれは父親が子供に対してでなくて、
男が女に対して向けたものであったと。
他の女への浮気は別にいいのよ。
私は愛情が冷めてしまった男に縋るほど、未練がましい女ではないから。
一生愛し続けるなんてのは、所詮、幻想に過ぎないのは経験済み。
まぁ、さっき出て行った衛兵を筆頭に、私もいろんな男と寝ているからね。
お互い様ってやつかしら。
でも、娘は別。
道から外れるにも程があるわ。
ところで、あの魔女はどうしているのかしら。
最後、娘を身籠る前に魔法の鏡をくれてから姿を現さなくなってしまった。
そういえば、あの魔女。
娘に似ている気がする。
義父である国王が亡くなり、夫が王になってから5年後。
彼は病気になって廃人になってしまった。
周囲の者たちは隠れて私のことを魔女と呼ぶようになったみたいだけど、
別に私は魔法が使えるわけではないし、魔法といえば、あの鏡。
私が問いかけると何でも答えてくれる。
確かに、あの鏡に話しかける私の姿は傍目から見たら奇妙かもしれないわね。
唯一、私が信用できる親友の様なモノ。
でもおかげでこうして廃人になった夫に代わって、
素人のこの私がこの国を壊すことなく動かせているのだから、
ちょっとは大目に見てほしいものだわ。
なんたって、私は女王なんだから。
ところで私の娘、やっと死んでくれた様ね。
日頃より、この私をいつもこき下ろした様な態度には我慢が出来なかったけど、
なんとか衝動を抑えてきたわ。
でもある日、魔法の鏡がこういったの。
「あなたは美しい。でもあなたの娘はもっと美しい」と。
ショックで腰が抜けそうになったわ。
私の全てを奪ってきた彼女。
雪の様に白い肌、血の様に赤い唇、黒檀の様に黒い髪の完璧な美しさを持つ彼女。
私の唯一の自信である外見の美しさを遥かに越えて育った彼女。
もう限界。
だから城から追い出し、あらゆる手を使って彼女を陥れ、
最後はこの手で殺した。
そんな理由で実の娘に手をかけるなんて大それたこと、
あまりの罪深さ故に発狂してしまいそうなったわ。
それでもなんとか冷静に私自身を誤魔化して、こう確信することにしたの。
あの娘はあの魔女の生まれ変わりだと。
あのガラスの靴を私にくれたのは何かの企みに違いないと。
魔女に堕ちる前はごく平凡な女だった私。
両親に勧められるままに、平凡な男と結婚し、平凡な家庭を築き、
平凡なりに時折幸せを噛みしめつつ、真っ当に生きてきました。
ある日、悪友に誘われて妖しげな集会を目にした瞬間、
心を奪われてしまったのです。
それから密やかに、
見知らぬ男と女の如何わしい駆け引きで陶酔を繰り返すうちに、
"悪魔" と名乗る素晴らしく逞しい肉体に宿る魂の完全な虜と成り果て、
気付いたら私は魔女に。
その悪魔曰く、
「私と永遠に添い遂げたいのなら、君は生まれ変わらなくてはならない」と。
私は悪魔の言うとおりにプランを立て、依代となる女を捜し出し、
見事、美しい娘に生まれ変わることに成功しました。
しかし、この女が気付いてしまったのです。
悪魔が生まれ変わる寸前に彼女に渡せといわれた魔法の鏡。
これで全ては上手く計画が進むものだといっていたのに、
何故?
私は黒い森に逃げて、
炭坑で働く7人の男たちの小屋にて匿われることになりました。
毎日の様に荒くれた男たちの奉仕に勤しむ一方で、
あの愛しい悪魔を呼びつづけました。
でも答えてくれません。
生まれ変わることで私と永遠に添い遂げるのではなかったのかしら?
絶望に苛まれる中、
ある日、妖しげなリンゴ売りの老女が小屋に訪れました。
一目見てこの女が "依代の彼女" であることを見抜いたのですが、
もうどうでも良くなっていたので薦められるままにリンゴをかじると案の定、
私は倒れました。
その瞬間、肉体から私の意識だけ離れ、
己の冷えた肉体を見下ろしました。
嗚呼、私は死んでしまったのね。
今まで私がやってきたことは一体、何だったのかしら。
呆然としていると帰ってきた男たちが私の死体に駆け寄り、
悲しんでいます。
彼らは私の死体をガラスの棺に入れ、
森の動物たちと共に弔いをしていると、
白馬に跨がった美しい青年が天使の様に現れました。
彼は棺から私の死体を抱き起こし、
キスをしてこう言いました。
「おはよう。私の "半身" 」
プロフィール
HN:
ポテチ/ラダ
年齢:
50
性別:
男性
誕生日:
1974/04/11
職業:
会社員
趣味:
単館系映画鑑賞、音楽や絵画鑑賞、そして絵を描くことと...
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