ポテチの水彩絵の世界にようこそ!
気分でコメントや画像とか、恐いのや面白い毒ある話とか、
現実の花の色と違ったりとか、妙な感じです。
私には、母親の記憶が無い。
母は、私が小さい頃に亡くなったそうだ。
父は、男手ひとつで私を育ててくれた。
優柔不断でお人好しすぎる父にイライラすることもあるが、
本当に感謝しているし、大好きだ。
そして、父がしてくれる母の話が好きだった。
小さい頃は、ある友人の母親が羨ましかった。
その友人宅へ遊びに行くと、お母さんが笑顔で出迎えてくれて、
美味しいお菓子を出してくれた。
そして帰りには「また来てね」と優しく声をかけてくれる。
私は父に、何故私には母親がいないのか、泣きながら訴えたこともある。
すると父は、決まってこう言った。
「アキラ(私の名前)、母さんはな、天国にいるんだ。
本当は母さんだってお前のそばにいたかったんだよ。
だけど、病気に勝てなかった。
母さんが一番辛くて、悔しくて、悲しかったんだ。
だけど、ちゃんと天国からお前のことを見てるよ。
なによりもお前のことが大好きだからね。
だから、母さんがいないことをお前が悲しんだら、母さんはもっと悲しいんだよ」
私はこの話を聞くと、天国の母を悲しませてはいけないと思った。
何より、この話をする時の父の悲しそうな顔を見て、
子供心に父を悲しませてはいけないと思った。
それから十数年、私に初めての恋人が出来た。
厳つい私はもてるタイプではないし、そういうことに奥手だった為、舞い上がっていた。
彼は、少し不思議なところがあった。
所謂、霊媒体質なのだそうだ。
私は大人になって、正直、霊の存在を信じていなかったが、
彼の機嫌を損ねたくなかった為、適当に話を合わせていた。
ある日、いつもの様に部屋で情欲にまかせた後、
彼と2人でまったりしていると、突然、私に聞いてきた。
「幽霊って信じる?」
信じていない。
どうしよう。
正直に言ってシラケるのは嫌だ。
しかし、嘘をついてもそれはそれで疑われそう。
私は顔に出やすいらしいから。
そこで、ふと思い付き、母の話をした。
父にいい聞かせられたことや、友人の母親がうらやましかったこと。
そして、「一度でいいから母と話しがしたいな」
叶うことは無いと分かりきっている願いだ。
すると彼は、「そっか」と言ってしばらく黙りこんでいた。
それから数日後、私は彼に呼び出された。
そこは普通のワンルームで、部屋には彼と綺麗な女性が待っていた。
「はじめまして。マサユキ(彼の名前)の姉です」
なんでも、彼の一族は代々拝み屋をやっていて、
中でもこのお姉さんが1番強い力を持っているのだそうだ。
「マサユキからあなたのこと聞いてね、私だったら少しだけ力になれると思うの」
そして彼女は正座して目をつぶり、しばらく動かなかった。
部屋の中に静けさが漂う。
やがて、彼女は目を開けて、こう言った。
「アキラさん、あなたにね、お母さんがあなたに伝えたいことがあるんですって。
お母さんは、あなたにごめんねって言ってるわ。
そばにいてあげられなくてごめんねと。
それから、これからもお父さんのことを宜しくと。
ちょっとだらしないところもあるけど、とっても優しい人だから、
この世で1番、あなたのことを考えている人だからですって。
それから最後に、お母さんはあなたのことを本当に愛してるわ。
お母さんが、あなたにしてあげられなかった分まで、
あなたは、いつか産まれてくる自分の子供に愛情を注いであげてね」
彼女は優しく私の手をとり、微笑んだ。
そして、私の右手に、御守りだと言ってピンクの小さな石を握らせた。
私の目からは不似合いの涙が溢れていた。
それから数年後、父が亡くなった。
父の葬儀が終わった後、葬儀場にとても嫌な感じの女性の姿を見かけた。
叔母だ。
私はこの叔母が苦手だった。
化粧が派手で、父のところに度々現れては、金をせびっていた。
私のことは完全無視で、まるで空気のような扱いだった。
私が「おばちゃん怖い」という度に、
父が「ごめんな、アキラ。父さんの妹なんだ」と謝っていたのを思い出す。
今日も、かろうじて喪服は着ているものの、御焼香もせず、ブラブラしているだけ。
品のない派手な化粧は相変わらずだ。
私が顔をしかめているのを見つけた叔父が、声をかけてきた。
「おいアキラ、あんまり気を落とすなよ」
「ああ、大丈夫だよ。叔父さん」
「そうか? なんだかお前、怖い顔してたぞ」
「俺、あの伯母さんが来ているものだから....」
「伯母さん?」
「うん、ほら、あそこでボーッと立ってる。お葬式なのにあんな化粧して」
「アキラ。....気持ちはわかるけど、実の母親のことをそんな風に言っちゃダメだぞ」
そういえば、マサユキのお姉さんに鑑定料とパワーストーンの代金20万円を払った後、
彼と連絡取れなくなったっけ。
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とあるデザインの専門学校にて昼休み。
「ついに入手したぞ、本物のスナッフビデオ〜」
前世にまつわる話などで時間を潰していた私と友人Aのそばに来るなり、
友人Bは興奮気味にそう、囁いた。
この2人は幼なじみらしいが、リアリストと夢想家というか、
全くタイプの違うコンビだ。
「はぁ?」友人Aがすかさず眉をひそめて曰く、
「これだからホラーオタクは。前に説明してやっただろ。
FBIの調査ですら、スナッフビデオの実在はついに確認されなかったんだって。
都市伝説にすぎないんだよ、あんなもん」
すると友人B曰く、
「いやいや、マジで本物なんだってこれが。
なんなら今日の放課後、ウチ来る? 見ればすぐわかるから」
友人Aはため息をつき、私の顔を見た。
どこか地下室のような場所。
粒子の粗い画像の中で、手足を鎖で縛られ、
壁に張りつけられた白人で全裸の青年が、狂ったように泣き叫んでいる。
そしてその前には、目と口だけが開いた黒いマスクを被り、
唸るチェーンソーを抱えた巨体で同じく全裸の筋肉男。
男は執拗にチェーンソーの刃を青年の身体に近付けては離すことを繰り返しながら、
英語だろうか。何か問いかけている。
やがてチェーンソーが青年の頭上に振りかざされ、
そのまま頭皮から下を切り裂いていく。
飛び散る血しぶき。
友人Bの部屋で問題のビデオを見つづけるうちに、私はすぐに気がついた。
「これ、カメラの移動とアップのタイミングが流暢すぎるよ。
あらかじめ動作を予測してないとこういう風には撮れない。
この若い男もいかにも演技っぽいし。特撮はわりとよく出来てるけどね。
残念ながら騙されたな」
そう言ってちらりと2人の顔を見た。
友人Bは無表情だ。
友人Aは顔から血の気が引いている。
目を見開き、唇を噛み締め、食い入るようにしてじっと画面を見つめている。
「おい、どうした?」私は声をかけた。
友人Aは答えない。
.....震えている?
もう一度、友人Bに目をやる。
相変わらずの無表情だが、どこか冷たく笑っているようにも見える。
いったいどうしたのだろう、2人とも。
チェーンソーの刃が青年の胸元まで食い込んだところで、ビデオは終わった。
すると「お前、そろそろ帰れば?」と、友人Bが突然、私に言った。
「え?」
「帰れよ、もう」
友人Aはうつむいたまま動こうとしない。
部屋を出る間際、友人Aが微かに
「never forgive me....」と英語をつぶやくのが聞こえた。
聞き覚えがあった。
今回もその後日から私は2人を2度とみることはなかった。
Naomi Campbell, Mert Alas and Marcus Piggott.
From "Interview Magazine"
とある中学校にて。
父親が "ヤクザ" だからといっていじめられるのは不当だと、
担任教師に訴えに来たある生徒の母親がいた。
そこで教師は彼らに謝罪させるべく、教室に来ていただく様言ったそうで、
教壇に生徒とその母親を隣に立たせた。
「お前たちの中にA君のお父さんが "ヤクザ" だからって虐めた奴らがいるそうだな?」
この時、教室は静まり返り、虐めていた生徒は少し動揺した。
「親の職業で差別してはいけない。仕事はどんな仕事でも立派な仕事だ。
ちょうどいい機会だからお母さん。
A君のお父さんの仕事内容を皆に教えてやっていただけますか?」と言った。
母親は一瞬信じられないという顔をして担任を睨みつけ、
顔を真っ赤にしながら息子の手を引っ張り、足早に教室を出て行った。
2人が出た後、生徒たちがざわめく中、
教師が一瞬だけ見せたシタリ顔を今も忘れない。
ある日のこと、私は公的な手続きに戸籍謄本が必要になり、
明日の昼間、役所に母にとってきてもらえる様に頼んだ。
しかし、母はとても狼狽し、父が帰宅してから家族会議になった。
そして父曰く、
「気をしっかり持って聞いて欲しい。お前は俺たちの子じゃないんだ。
本当は成人してから話すつもりだったんだが、
戸籍を見たら判ってしまうからな.....」
そうやって父が見せてくれた戸籍謄本には、
祖父の籍に養子として入っている私の名前があった。
私は狼狽しながらも何とか気を強く持ち、2つの疑問を口にした。
「私のことについては解りました。そこで父さん、2つ聞かせて欲しい。
1つ目は、なぜ祖父の籍なのか。
もう1つは、私以外にいるもう1人の養子の男は誰なのか」
そこで父曰く、
「1つ目は、俺が正式には結婚してないからだ。もう1つは.....
ある青年が山道を走っていた。
山の頂に住むという仙人に会うためである。
彼は近々結婚を控えていたのだが、
村に謎の伝染病が流行ってしまい、それどころではなくなってしまった。
婚約者も彼の家族も皆病床に伏せってしまい、居ても立ってもいられなくなった青年は、
何でも知っているという仙人に知恵を借りに行ったのだ。
そして、重々しい足取りながらも、ようやく仙人に会うことの出来た青年は尋ねた。
「仙人様、村のみんなが変な病で苦しんでいる。どうしたら助けられますか?」
仙人は悲しそうな顔で答えます。
「わしの力じゃあどうしようもない。悪魔の力でも借りんことには無理じゃろて」
青年はなおも食い下がり、尋ねた。
「ならば、その悪魔の居場所を教えてほしい。私はどうしてもみんなを助けたい」
仙人はしばし悩んだ後、こう答えた。
「うーむ、まあいいじゃろう。悪魔の住む村を教えよう。
じゃが、おそらくどうにかできるのは、白い尻尾の優しい悪魔達だけじゃ....
黒い尻尾の意地悪な悪魔たちには無理じゃろう。.....それを忘れるな」
青年は悪魔の住む村の場所を教えてもらうと、すぐにその場所へと向かった。
そして白い尻尾の悪魔を見つけると、頭を下げて頼むことに。
「ある方に聞いて参りました。私の村で妙な病気が流行り、皆苦しんでいる。
どうか、助けてほしい」
その悪魔はにこやかにほほ笑むと、
「ええ、良いですとも」
と一言言い、呪文を唱えました。
「さあ、もうこれで大丈夫。早くお帰りなさい」
青年は悪魔に涙ながらにお礼を言うと、一目散に村へと帰って行きました。
(これでみんな助かったんだ)
彼の足取りは、来た時以上に軽やかでした。
そんな青年が帰るのを見届けると、
白い尻尾の悪魔に黒い尻尾の悪魔が近づき、話しかけた。
「俺にはお前みたいな酷いことは出来ないよ」
白い尻尾の悪魔はにこやかにほほ笑むと、
「あなたは私なんかと違って優しい方ですからね。
.....そう考えるのは、仕方ありません」
昨日出所した。
俺は無差別に5人殺したが、事件当時は未成年であったということで、4年程で釈放。
そういえば、当時はワイドショーを連日騒がせていたな。
今は心から反省してるし、早く家族を養うために働きたかった。
なぜ20歳そこらの俺が家族を養うかって?
当然、俺のしでかしたことで両親は会社をクビになってるし、
姉は学費が払えなくて高校を中退。
挙げ句の果てに殺した奴の仲間にレイプされて妊娠。
外出もままならない家族はこの4年間、
飯買いに行く時以外は家に籠もりっぱなしさ。
だが貯金も尽きて電気が止まり、ここ半年は塩と水道水だけで生活してたらしい。
さぞ恨まれているだろうと実家に帰ったが、
みんな何もなかったかの様に振る舞ってくれて、正直、俺は涙がでたよ。
母はテレビを見ながら手を叩いて大笑いしてるし、
姉は自慢の髪をドライヤーで乾かしながら大声で誰かと電話で話してる。
父はその様子を見ながら隠していた焼酎をチビチビ飲み、微笑を浮かべてた。
ああ、俺が早く働かなければ、このまま....
兄が狂乱し、家族を皆殺しにした。
すぐに兄は逮捕され、死刑となった。
俺は幸運にも生き延びたが、事件のショックで記憶を失ってしまった。
父も母も失い、記憶もない。
空っぽな心で無気力なまま生きていた俺は、
ある日占い師と出会い、自分の過去を占ってもらうことにした。
「何故兄は発狂したのでしょう」
「いいえ、アナタの兄は冷静でした」
「何故家族を殺したりしたのでしょう」
「いいえ、兄が殺したのはひとりだけです」
そして俺は全てを理解して、泣いた。
妻が俺を見つめている。
俺の胸に、妻と暮らした数十年の年月が去来する。
妻の命が消えようとするこの時を、俺は心に刻みつけようと思った。
妻はたどたどしい言葉で、自分がいかに至らない妻であったかを述べ始めた。
気が強かった妻が、このようなしおらしい言葉を口にするものなのか。
俺の心の中に、言葉で言い表しようのない感情が溢れてくる。
妻は涙を流しているようだった。
この期に及んで、妻の悔悟の言葉を聞きたくはなかった。
「もういいんだよ」
俺はそういうと、指に力を込めた。
風邪ひいて寒気がする。
新宿の歌舞伎町にある病院に行くため、俺は西武新宿線のつり革につかまってた。
で、あたまがぐわんぐわんと痛くて、目を閉じて眉間にしわ寄せて耐えてた。
そこで記憶が途絶えて、気がついたら夕方で、あたりは見知らぬ景色。
買ったことない服着てて、髪染めたこともなかったのに紫になってた。
俺はパニクって近くのラーメン屋に入って、ここはどこ? と聞いた。
大阪市の福島駅の近くで、時間が1年近く経ってた。
電話をしようと尻ポケットのケータイを取り出すと機種が変わってた。
アドレス帳には、「ま」とか「ひ」とか、一文字の名前で電話番号が10程度あったけど、
知り合いや実家の電話番号がない。
俺はなぜだか知らないが、その知らない電話番号が恐ろしくて、川に捨てた。
警察から実家に連絡した。
向こうもパニクってた。
俺に捜索願が出てた。
とにかく、帰って、今もまだ月一で精神病院に通ってる。
仕事は元の会社には帰れないみたいだったので、今は派遣やってる。
俺にはガチムチの彼氏がいる。
だが、最近妻に感づかれたみたいで、
家に帰るといつも「どこ行ってたの?」等が五月蝿い。
逆に彼は毎日メールで励ましてくれる。
俺にとってはこいつはオアシスのような存在である。
しかし今日はメールが返って来ない。
俺はフられたと沈み家に帰ると、ペットの犬・ゴン太が上機嫌で迎えてくれた。
妻も機嫌が良く、口うるさくなかった。
もう不倫はやめようと思い、彼に「さよなら」とメールをした。
あれ? 近くで彼のメール着信音が聞こえたような気が.....
ぼんやりテレビを見てたら、おかしな夢を見ていた
気がついて時計を見ると 東京は夜の7時
アナタに会いに行くのに、朝からドレスアップした
一晩中愛されたい 東京は夜の7時
待ち合わせたレストランはもう潰れて無かった
おなかが空いて死にそうなの
早くアナタに会いたい
早くアナタに会いたい
ピッチカートファイブ 「東京は夜の7時」より
この曲は凄くポップで好きなのですが、歌詞だけ見るとなんか怖い感じがする。
「面白いビデオがあるから見に来いよ」
友人Aに誘われたのだが、その日は都合がつかなかったので断った。
数日後、「面白いビデオがあるから見に来いよ」
友人Bに誘われた。
その日は何も予定が無かったので見に行った。
友人B宅につくと「よかった〜、淋しくてさ。ま、あがれよ」
「この前、Aにも『面白いビデオがあるから見に来いよ』って誘われたんだよ。
その時は行けなかったんだよな」
「知ってる」
「そうなの? あ、それがこのビデオ? 借りてきたの?」
「ま、見ようぜ」
ビデオが始まった。
どこかの誰もいない部屋が映ってる。
見覚えがあるな。
ああ、これはAの部屋だ。
....しばらくは何も起こらない。
怪訝に思ってBに話しかけようとするといつの間にかいない。トイレか?
俺はまた画面を見つめる。
「おーいA。ビデオ終わったぞ」
Bの声だ。返事はない。
画面の正面にある押し入れの襖が少しずつ開いていくのがわかった。
はは〜ん、押し入れの中からいきなり出てきて脅かそうってパターンかな。
相変わらずゆっくりと襖が開いていく。
中から人が出てきた。
あれ? Aじゃん。
Aが近づき、そのままカメラの前を通り過ぎた。
「ちょっ、何だよお前、なっ...く....来るな...やめろ...やめ...て...くれ....」Bの声だ。
Aが戻ってきた。
何か引きずってる。
Bだ。
Bは生気のない表情のまま足を持ったAに引きずられていく。
そのままAとBは押し入れの中に入っていき、ゆっくりと襖が閉じられた。
しばらくしてビデオが終わった。
.....なんだこれ。
「おーいB。ビデオ終わったぞ」
.....返事はない。
ゆっくりと押し入れの襖が開いていくのが見えた。
事故にあった。
私と5歳になる娘は奇跡的に怪我もなく無事だったが、妻が帰らぬ人になった。
妻は不思議な女性だった。
何か物を紛失した時など、妻はいつの間にか、どこからともなく見つけてしまう。
先に起こることを知っているかのような言動をすることもあった。
一度、娘が行方不明になった時、私はあわてて警察に届けようといったのだが、
妻はいついつまでに帰ってくるから心配するなと言った。
そして、その通りに娘は帰ってきた。
娘に何をしていたのか尋ねても、「おじいちゃんに会って来た」と言うばかり。
しかし、妻には身寄りがないし、わたしの父は既に亡くなっている。
その時も妻は笑っているだけだった。
この旅行は、妻の提案によるものだった。
列車の旅。妻は外の景色を眺め、娘は私にもたれていた。
不意に、妻が私の方に振り返って言った。
「あなたは強い人。大丈夫ね」
意味がわからず、何のことかと問い返そうとした時、事故は起こった。
妻の死に顔は眠っているようだった。
私は、付き合い始めた頃のことを思い出す。
結婚してからは私を「あなた」と呼んでいたが、
はじめは「お父さん」と呼んでいたのだ。
「お父さんはやめてくれ、呼ぶならお兄ちゃんにしろよ」
とよく言い合ったのを思い出し、涙がこぼれた。
私が仕事から帰ってくると、妻が玄関の前で待っていた。
またか。
ひどく憂鬱になる。
「あなた、お帰りなさい。家に入ってはダメよ」
「なぜ?」
「火星人が家に攻めてきたの。今ジョンが戦っているわ。
でもさっき鳴き声がしたきり」
私は玄関先で穏やかに妻をなだめると、家に入った。
当然火星人などいない。
妻は泣き喚く。
「ああ、ジョン。ジョンが死んでしまったわ。私たちを守ってくれたのね」
「そうだね。ジョンは庭に埋めてあげよう」
私は「ジョン」を庭に埋める。
愛する妻を守るためとはいえ、何人こうして埋めなければならないのだろうか。
友人Aの彼女が殺された。
報道こそされなかったものの、かなり無惨な殺され方だったと
彼女を最後に確認したAが私にだけに教えてくれた。
数ヶ月が経ったある日、気晴らしにと、Aと別の友人Bと3人で食事する機会があった。
その帰り道、人通り少ない道を歩いていた時に、前方から女が歩いて来るのが見えた。
その時突然Aが「あああぁ....」と、頓狂な声を発して震えだした。
その女は殺されたAの彼女だった。
恐怖で固まる私達3人を無言で見つめる彼女。
何を訴えたいのだろうと私が考えているとBが震えながら小さい声で言った。
「舌だ、舌が無いからしゃべれないんだ!」
そうだ、と私は思った。
無惨にも彼女は舌を切り取られて殺されたのだった。
だから喋れないのだと気づいた。
その瞬間、凄まじい形相になった彼女が何かを訴えるかの様に激しく口を動かし始めた。
確かにその彼女には舌がなかった。
何も無い空洞のような口からニチャニチャという血糊の音が聞こえた。
私は気を失った。
十数分後、野次馬の人だかりの中で気がついた私は凄まじい惨状を目撃した。
Bはナイフで自分の舌を切り取って絶命していた。
目撃者の話によると、発狂したように自分の口に突き刺していたらしい。
Aは恐怖のためか、急に車道に飛び出して車に引かれたという。
幸い、Aは骨折程度ですんだ。
事故を起こした車の運転手の話によると、
車道に飛び出すAの後ろにシャツを引っ張っている女の姿を見かけたが、
いつの間にかその女は消えてしまったという。
プロフィール
HN:
ポテチ/ラダ
年齢:
50
性別:
男性
誕生日:
1974/04/11
職業:
会社員
趣味:
単館系映画鑑賞、音楽や絵画鑑賞、そして絵を描くことと...
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